May

2002

八方尾根スキースクール教師【TOK】の個人的な日記です。興味のある人はどうぞご覧ください。(^I^)  
          
Ski Top へ   【TOK】への Mail          

 What's Today ?

What's Today ?

5/29 ウラシマ物語
5/28 ベンディング
5/27 熱意を伝える
5/26 実践種目講習テスト
5/25 技能テストの意味
5/24 バトンタッチ意識
5/22 小回りの外向
5/21 安定したすべり
     …クロスオーバー
5/20 安定したすべり
      …重心の軌跡
5/19 安定した滑り
     …バランスの意味
5/18 “感じる”…その4
     …運動器と感覚器
5/17 “感じる”…その3
       …素直に任せる
5/16 “感じる”…その2
   …〜する,と〜される
5/15 “感じる”…その1
     …支点探しツァー
5/14 ズレと切れ
5/13 応用の利く滑り
5/12 〜でなければならない
5/11 ジュースを浴びる
5/10 エネルギーライン
5/9 外向傾の再認識
5/8 自然体のスキー
5/7 あるレッスンの形
5/6 擬声語とスキー
5/5 トップコントロ-ル
          の意味
5/4 引出しのリンク
5/3 引力に引かれる自分
5/2 引出しの数
5/1 「小回り」のポイント

*** これまでの日記 ***

*  2002年4月
*  2002年3月

*  2002年2月
*  2002年1月
*  2001年12月
*  2001年11月
*  2001年10月
*  2001年9月
*  2001年8月No.2
*  2001年8月No.1
*  2001年7月

*  2001年6月

*  2001年5月

*  2001年4月

*  2001年3月

*  2001年2月

*  2001年1月

*  2000年12月

*  2000年11月

*  2000年10月

*  2000年9月 #2

*  2000年9月 #1

*  2000年8月 #2

*  2000年8月 #1

*  2000年7月

*  2000年6月

*  2000年5月 

5/29 (水)  曇り
 
今日の東京都心…すこし雲が広がっています。
 仕事の合間に,いろいろ見て回っています。本屋やパソコンショップなど…。白馬に居る時は,のどかな風景の中で心静か…という感じですが,ここ東京に居ると,どことなく追い掛けられているような,そんな気がします。すっかり「田舎人」になってしまったのでしょうか?ハッハハハハ……(^I^)
 でも,私にとってはこれが「非日常」で,いろいろ学ぶことがあるのです。それにしても「技術の進歩」には驚かされます!。約半年ぶりのパソコンショップ巡りでは「アレレ…アレレ…」の連続でした。まるで「浦島太郎」状態です!
 浦島太郎…??? 誰のこと…? という人も多いのかな? (^I^)
 …ということで,今日の教師日記は,ウラシマ物語…デシタ! (^I^)


5/28 (火)  快晴
   今,出張で東京に居ます。都心部は快晴のいい天気です!。白馬に比べると5,6℃気温が高いのでしょうか? Tシャツで大丈夫です。(^I^)

           -------------☆★☆-----------

   さて,今日の「2002シーズンを振り返って…」は"ベンディング"について…。
   “重心”を極力上下左右前後に変化させること無くクロスオーバーが行なわれれば,安定したスキーイングができることは以前話しました。そのためには“ベンディング”技術ができるかできないかが大きな分かれ目になります。普通,ベンディング…というと,自ら脚を伸ばしたり縮めたり,ということをしようとしがちですが,本来は雪とスキーのコンタクト圧を調整する中から自然発生的にできるようになるのが望ましいのです。
 教師日記「5/21 安定したすべり…クロスオーバー」で書いたように「スキーそのものを左右に移動させる方法」や「重心を次のターンに落とし込む方法」では荷重と抜重が急激に行なわれやすかったり,重心の移動の速さに違いが生まれたりして,ベンディングにはなりにくいのです。ベンディングが一番起こりやすいのは,「重心とスキーの両方を互いに交錯するように移動させる」方法で,重心の移動が直滑降のように滑らかに斜面を移動し,支点がその重心の下を通過して行く滑り方になるので,重心の下を脚がたたみ込まれる様にしやすいのです。
  ここで大事なことは,自動車のサスペンションのイメージを持つことです。先ず,いつもお話している“エネルギーライン”がスプリング(バネ)で巻かれていると仮想します。そして,スキーがフォールラインを向いて最も角付けが強くなり脚も伸びた状態にある局面を,エネルギーラインのスプリングが最も伸びている状態だとイメージするのです。そこから,クロスオーバーの地点に向かってそのスプリングが徐々に縮まって来て,最も圧縮された状態になることをイメージすればいいのです。スプリングがイメージアプされている状態は,“バネ”のイメージですから雪面とのコンタクトは失われず,圧をキープしながら脚(スプリング)が腰(重心)の下に「たたみ込まれて行く」ようになります。
  脚を伸ばす,縮める…といった「形」だけのベンディングでなく,「圧意識」をしっかり持ったベンディング要素を身につければ,その時々の斜面状況や滑走スピードにあった適度な重心の上下動が出ることもあります。でも,この上下動は圧コントロールができた上でのものですから,スキー滑走の安定性が犠牲になるものではありません。

  この“ベンディング”…その感覚が分かるまでちょっと時間が掛かる人も居ますが,一度覚えてしまうと「圧コントロール」が抜群に良くなり,深雪,コブの斜面でも大きな威力を発揮してくれます。また「自ら雪に加える圧」と「雪からもらう圧」の区別もつくようになり,「スキーの達人」になるための大事な感覚でもあります。ぜひモノにしてもらいたい技術です。


5/27 (月)  曇り
 
 
今日は気温が12℃で,昨日から肌寒い日が続いています。日本上空に弱い寒気が来ているようですね?
  さて,明日早朝から出張で白馬を留守にします。出先からUPできましたら,この教師日記もUPしますが
。そういう訳で,もしUPできなかったらゴメンなさい

          -------------☆★☆-----------

  さて,今日の「2002シーズンを振り返って…」は“気持を伝える”ということについて…。
  今年もレッスンを通して多くの方とご一緒することができました。前にも書いたことがありますが,スキー教師をさせていただいていると,毎日数人の新しい方との出会いがあります。初めは互いに緊張していてギコチ無いのですが,1時間もすれば互いに打ち解けて親密度も増してきます。そして,レッスンが終了する頃には前から知り合っていたスキー仲間のような雰囲気になります。
スキー教師をしていて本当に良かったなぁー…と思う瞬間でもあります。
  で,これまでのいろいろな方との出会いを考えてみると,この親密度をできるだけ早く作り上げ,互いの信頼が増して,効率良いレッスンをするにはいくつかのテクニックみたいなのがあるように思います。それは「自分をさらけ出す」,「生徒さんの希望がどこにあるか?早く見つけ出す」,そして「一生懸命になる!」ということです。昔から「打てば響く」ということわざがありますが,「私は熱意を持って“打つぞ!”」という気持を,素直に生徒さんにさらけ出すことが“生徒さんが響く”ための一歩だと思います。“響く”ためには生徒さんが「受け入れようとする素地」を作り出すことが大事です。教える側からの「押し付け」…では「反発」は生じても,「聞いてみよう」という気持は生まれません。聞く耳が無いときに,いくら有益なことを話してもそれは何の役にも立ちません。「聞く耳」を持ってもらうには,教える側の熱意を伝え,それを理解してもうことです。ある意味で「熱意馬鹿」…になるくらいの気持が必要だと思います。
  「気持を伝え合う」…という人と人のコミュニケーションがうまく行ってこそ,いいレッスンができ,互いが満足した気持になることができるのです。これはなにもスキーレッスンだけに限ったことではありません。人生そのものの生き方と似ている…そう思います。
  さて,今シーズンも,自分ではそういった“気持を伝える”…ということを忘れずにレッスンをさせてもらったつもりでいますが,果して生徒さんにうまく通じたかどうか?…。雪が消えて,この時期になると毎年のようにそんなことを考えます。(^I^)



5/26 (日)  快晴
 
 
今日も少しだけ山の上に雲がありますがいい天気の白馬です。でも気温は11℃…と少し肌寒い気候です。

          -------------☆★☆-----------

  さて,今日の「2002シーズンを振り返って…」は「技能テスト」の二回目で“実践種目テスト”について…。
  これも3年前から導入されたシステムですが「実践種目講習テスト」というのが行われる様になりました。 『技術種目の完成度ではなく,安定,確実に斜面を克服するスキーヤーの実践的能力の高まりに重点をおいた到達度,習熟度を評価基準とする …』ということで, 『 事前講習とは別枠で捕え,講習や実習の中で技能の習熟度や到達度を主体に評価する方式 』…つまり「実践種目講習テスト」が導入されたわけです。
  でも,良く良く考えてみると 「…事前講習とは別枠で捕え,講習や実習の中で…」というのは,実は私たちスキー教師の立場からしてみれば“一般レッスン”に他ならないのです。で,この一般レッスンの中で,スキーヤーの到達度,習熟度を評価する…ということになれば,おのずとレッスンそのものが目的のひとつとして「技能テストに合格する為のレッスン」となってしまう図式が生まれて来ます。でも,一般レッスンはなにもその目的が「検定」だけに限定されるものではなく,もっと応用の利く幅広い技術要素の修得を目的としています。レッスンそのものが「検定」を視野に入れ過ぎてしまった原因はここにあると思います。レッスンと検定は別物…という視点に帰る必要があると思います。
  また,「実践種目」というネーミングそのものはあたかも「実際の斜面を滑る時に役立つ種目」…という印象を与えるのですが,その内実は,例えば1級の検定では「カービング要素」に限定してしまっており,社会通念上思い起こすことのできる“実践”とはおおきくかけ離れていると思います。いろいろな条件の斜面を滑る時に,カービング技術だけでは滑り降りることは不可能なのです。
  こう見てくると,検定の目的は何なんだろう?…という疑問が沸いて来ます。 『 何を滑るか?ではなくどう滑るか?』ということが大事なのだと思うのですが…。



5/25 (土)  快晴
 
 今日は本当にスッキリしたイイ天気です!。梅雨の前の,いつもの美しい白馬の5月…そんな天候です。
  この週末は天気も良さそうですが,皆さんのご予定は?

          -------------☆★☆-----------

  さて,今日の「2002シーズンを振り返って…」のテーマは“技能テストの意味”について…。
  「技能テスト」…というテーマ,重い気がします。というのはこの「技能テスト」…俗に言う「バッジテスト」なのですが,この主旨が少し本来の目的からかけ離れはじめている…と思うからです。
  私の全く個人的な意見ですが,この原因は3シーズン前の改定に依るもののように思います。その時の「改定の基本的な考え方」,“なぜ改定の必要があったか?”として,
 @「日本スキー教程・指導実技編」との整合性を求めるために…
 A受験者の減少傾向に対応するため…
 B指導者の資格認定制度の改定に伴う要請講習との関連で…
という三つの理由が挙げられていました。
  しかし,考えてみればAの理由の受験生を増やしたい…というのは主催者側の論理であって,受験者サイドの理由であった「私はどれ位のレベルにあるのかしら?」ということと関係はありませんでした。どうして受験生を増やす意味があるのか?という点についても明確な説明が無かったように思います。もし,スキー人口の減少に歯止めを…というのであったなら,検定ではなく,むしろスキーの楽しさを啓蒙する活動の方が求められていた筈です。受験生を増やすことがスキー人口を増やすことに結びつく…という発想は????と思います。
むしろ,検定,検定,検定命!…といったスキーヤーを増やしかねません。確かに一役は担っているとは思いますが,本来なら「検定」ではなく「普及」部門がそれを行なうべきでしょう。
  またBの理由は全くS○Jサイドの理由であって,そのシステムと直接的に関係の無い一般スキーヤーには意味の無い理由でした。このような「検定」という位置付けは,1級⇒テクニカル⇒クラウン⇒技術選という図式と,1級⇒準指導員⇒指導員…といった図式を一層強くし,スキーヤーをその組織に取り込むための手段として使われる側面を持っていたのです。もしこの主旨が「技能テスト」ではなく,「準指導員」「指導員」の“検定”に限定されるのであれば意味はわかりますが…。
  さて,残る@ですが,これも少し疑問があります。「日本スキー教程・指導実技編」が求めるものは,その最初のページ「はじめに」で丸山教育本部長が書かれているように,「安全で楽しいスキーの普及」であり,「健康や生きがいなどの充実を求める人々の生活文化」としての“スキー”です。そしてその内容は「安全で確実な技術を目指す過程」,「美しく快適な技術も目指す過程」であり,そして「早く,強い技術を目指す過程」となっています。これはこれで,いろいろなスキーフィールドにおいてスキーを楽しむためには技術的な研鑚が役に立つ…という視点で間違っていないと思います。しかし,「検定」という場面においては,必ずしも上位技術の「早く,強い技術」だけが優位であるとは限りません。ある状況においてはスキッディング的要素を多用し,安全性を優先させることが状況に合っている場合もあります。これを無視して,上位技術に位置付けられている「カービング」を1級以上の検定での重要なファクターとして限定したところに大きな落とし穴があるように思います。技術はあくまで技術であり,その技術がいくら重要なものであったとしても,実際の斜面状況に合っていない技術なら使うべきではありません。「整合性」を求める…ということが,どんなところでもその技術で滑る,ということになってしまっては,本来の検定の意味から大きくかけ離れてしまいます。スキー技術が多種多様であるからこそ,その条件や状況に即応した技術を使うことが大切なのであって,まさにここにこそ「安全で楽しいスキー」の意味があると思うのです。
  “検定”というのはあくまで「自分自身のレベル判断」として使われるべきだと思います。あるレベルをクリアすることが次の段階に進むための条件になったり,アイツより俺の方がうまい!という比較の道具として使われ始めることになリ過ぎると,それはどこかの国の「受験戦争」に似た様相を呈してきます。自分の現段階のレベルを適正に判断してもらい,その結果を次なるステップへの自分自身の励みとして活用したり,例えば「1級のレベルならヘリスキーツァーのAコースに参加できるよ!」…という風に活用したりすることが,本来の目的だと思います。
  加熱した「受験」戦争は,“スキー”本来の持つ楽しさ,を窮屈なものにしかねない…そんなことを思った今シーズンでした。


5/24 (金)  曇り
 
 
昨日は利用させていただいているサーバーの緊急メンテナンスで,いちにちアクセスできませんでした。失礼致しました…(=_=;)
  昨日,お客様を案内して八方尾根に行って来ました。途中スカイラインゲレンデは「カタクリ」や「一輪草」がきれいに咲いていました。(^I^)

          -------------☆★☆-----------

  さて,今日の「2002シーズンを振り返って…」のテーマは“バトンタッチ意識”について…です。
  今シーズン新しく登場した言葉に「バトンタッチ」というのがあります。これはクロスオーバーを無理なくスムーズに行なうための意識です。陸上のリレー競技の「バトンタッチ」のようなイメージ…という意味で,この名前を付けました。直線コース上にリレーのバトンタッチゾーンがあるように意識し,このゾーン内で「バトン=蓄積されたエネルギー」を渡す…というような意識を持つのです。例えば「左ターンから右ターンにクロスオーバーする時」のことをイメージすると,それまでの左ターンでは「右足」(右スキー)が前走者で「左足」(左スキー)が後走者になります。そして右足の走者が左足の走者にバトンを渡す意識を持つのです。このバトンタッチ意識をもつことで,二つの効果が生まれました。
  ひとつは,「重心とスキーのスムーズな交錯」です。バトンタッチでは両選手とも立ち止まることなく前方に走って行かないと時間ロスが出ますので,積極的に右走者が左走者に追いつこうとします。左走者はできるだけ右走者のスピードまで加速してからバトンを受け取ろうとします。この意識は腰(重心)の下を両足がスムーズに交錯させることになりました。しかも,バトンタッチゾーンが直線…ということで,「斜めの直滑降」的な意識が生まれ,昨年お話した“キャロットターン”的な滑りに近くなります。
  二つ目の効果は,「圧変化が急激にではなく,無理なくゆっくり行われること」でした。クロスオーバーでの急激な圧変化は,その後のターン始動期で雪面の捕らえを遅らせるばかりでなく,バランスを崩す大きな要因ともなります。バトンタッチ意識を持つことで,ゆっくりとした交互操作的な圧の伝達が行なわれるようになります。特にターン中盤の角付けが最も大きい局面から,クロスオーバーでの角付けゼロの局面まで,角付けがゆっくり外されるようになります。それにつれて雪面コンタクト圧も,徐々に変化します。先にあげたターンの例では,左ターンの中盤で最も右スキーの角付けが強くなり,これが次第にクロスオーバーに向けて緩やかになって来ます。それにつれて雪面コンタクトの両も少しづつ減り始めます。その減った分の圧は,実は「左足のコンタクト」という形で現れて来ます。つまり,バトンタッチ意識では,「クロスオーバーでの交互操作的な意識」なのに,前のターンの中盤からすでに内スキーでの雪面コンタクトが自然に生まれてきている…ことになります。ですからこの意識を持つと,圧の変化を急激なものから,ゆっくりしたものにすることができるのです。これを「内スキー主導」…と述べている人もいますが,意識はあくまで「外スキー」です。
  この意識は思いの他効果がありました。「舵取り」から「ニュートラル」にいかに抜けるか?ということのひとつの答えだと思います。これを「バトンタッチ」意識と名付けることにしたのでした。(^I^)


5/22 (水)  曇り
 
 天気予報では「快晴」なのですが…ちょっと曇っている白馬です。明日まではこの天気持ちそうですが…。

          -------------☆★☆-----------

  さて,今日の「2002シーズンを振り返って…」のテーマは“小回りの外向”について…です。
  検定種目の単独種目でなくなったせいでしょうか,ここ数年「小回り」の苦手な人を多く見かけるようになりました。カービングスキーでちょっと大き目のターンをしている方が楽しい…ということもありますが,幅の狭い所などを滑り降りるには大事なテクニックです。また,実際にコブ斜面や悪雪などを滑るときなども,中回りや大回りだけでなく,小回りをしてみるとまた別の感慨があるのですが…。
  小回りの苦手な人が多くなった原因のひとつは,「外向傾の練習不足」にある…と思っています。緩斜面のカービング小回りでも,体の「ネジレ-戻り」要素をそんなに使わないものの,体の向き,特に上体の向きはフォールラインをキープしています。某スキー雑誌で「ターン始動期に身体を正対させることが,カービングーショートのポイントとなる…」という解説を読みましたが,そこに掲載されている写真を見ても「正対している…」という風に私にはみえません。滑り手の意識の中には「正対イメージ」があるかもしれませんが…。緩斜面で比較的縦長気味に滑れて,スピードが出ても対処しやすい環境では,上体や腰の向きがクロスオーバーの段階でやや正対にしても対応できるかもしれませんが,急斜面になればほとんど不可能だと思います。
  そこで今シーズンの後半は,思い切って「正対ではなく逆ヒネリ!」ということを主張して生徒さんに小回りを練習してもらいました。「逆ヒネリ」や「外向傾」…などということを唱えると,「アイツは何を教えてるんだ?」という風潮がある中でコレをやってみると,それまで「小回り」が思い通りにできなかった人達が,まるで人が変わったようにうまくできるようになったのです。ただし,ターン後半で角付けを強め,スキーの進行速度を抑えて,そこに蓄積したエネルギーを一気に次のターン外側にもっていくやり方,ではありません。ターン中盤で最も外スキーの角付けが強くなった状態から,クロスオーバーにかけて徐々にその角付けを緩め,腰の下をそれまでの外スキーが通過するする時にフラット感覚にする意識を持つ…というやり方です。この時,それまでターンをリードしてきた外スキーのエネルギーを,次のターンの外スキーバトンタッチして行くようにすると,次のターンの始動も早く行うことができるのです。この時に上体と下半身の間に「逆ヒネリ」ができていることと,重心の下をスキーが交錯していく意識を持つことで「安定した切れのある小回り」が可能になるのです。
  敢えて言えば,滑り方はいろいろありますので,コレが正しい,アレは正しくない…というつもりはありません。技術選上位にランクされる人たちの中には「小回りも正対」感覚で滑る人も居られると思いますが,そこまでいかない一般のスキーヤーは,もう少し「外向傾」の持つ意味を考えた方が…と思った【TOK】でした。(^I^)



5/21 (火)  曇り
 
 今朝は雲が多かった白馬ですが,この雲も取れ,快晴に向かい始めました!(^I^)
  私事で恐縮ですが,このたびスキースクールの役員改選があり,技術・指導と検定部門の担当役員を仰せつかりました。スキースクールの中核の部署で,その責任の重大さを感じていますが,これまでの経験を生かして,“スキー”の楽しさを一人でも多くの人に知ってもらい,共に楽しむことを目指して,最善を尽くして行きたいと思います。皆さんからも,建設的なご意見をどしどしいただきたいと思います。
  尚,このホームページは,一スキー教師【TOK】のプライベートページとして,私の個人的な意見を発信する場として,これからも継続してまいります。個人としての発言と,公人としての発言を,区別して受け入れてもらう素地が残念ながら日本には少ないですが,このホームページの内容は,あくまでも個人的な意見であることをご了承いただきたいと思います。
  そういう訳で,トップページにひと言メッセージを載せさせていただきました。皆さんの暖かいご理解をよろしくお願い致します。

          -------------☆★☆-----------

  さて,今日の「2002シーズンを振り返って…」のテーマは“安定した滑り”の第3弾で「クロスオーバー」です。
  これまで,“安定した滑り”ということで,「
バランスの意味」「重心の軌跡」について考えて来ましたが,最もそのバランスを崩す要因が多いのは「クロスオーバー」においてです。これまでターンして来た方向とは異なる方向に回って行こうとするわけですから,それまで受けていた側圧の方向が全く反対になり,それとバランスを取って行かなくてはなりません。このことがクロスオーバーを難しくしている原因だと思います。
  クロスオーバーのさせ方を考えてみると,大きく別けて三つのパターンになります。ひとつは「重心の移動を止めてスキーを左右に移動する」方法です。二つ目は「スキーの移動を止めて重心を斜面下方にに移動する」方法で,最後は「重心とスキーの両方を互いに交錯するように移動させる」方法です。
  「重心の移動を止めてスキーを左右に移動する」方法は,重心の下をスキーそのものを左右に動かすことによりクロスさせるもので,シュテムターン的な動きです。支点を左右に動かすことになりますので,雪面コンタクトが不規則になるのでバランス保持が最も難しく,低速でのスキー操作になります。一般に「C字」の滑りと言われるものです。
  次の「スキーの移動を止めて重心を斜面下方にに移動する」方法というのは,重心をフォールライン側,あるいは次のターンの内側に持って行こうとするやり方で,ある人たちはこのことを「クロスオーバー」と呼んでいます。「重心や身体の前後移動」とも言っています。重心をフォールライン側や斜め前後に移動させる意識が働きますので,どちらかというと雪面のコンタクト圧が変化しがちになり,内倒しやすくなります。また次のターンの捕えが遅くなる欠点があります。重心の斜面上の移動が早くなったり遅くなったり…という傾向が現れます。
  最後の「重心とスキーの両方を互いに交錯するように移動させる」方法は,重心の移動が直滑降のように滑らかに斜面を移動し,支点がその重心の下を通過して行く滑り方で,コンタクトを失う確率が最も低く,クロスオーバーでは最も安定したやり方だといえます。この様なやり方を「クロッシング」と呼んでいる人たちがいますが,その人たちの感覚の中には「重心の移動を止めて,スキーあるいは支点を前後に移動させる…」という意識があるようです。最初の「重心の移動を止めてスキーを左右に移動する」方法の“左右”を“前後”に置き換えた感覚のもののようです。でも,重心の移動を止めてしまう意識があると,そこでスキーヤーのスムーズな流れは止まってしまいます。あくまでも斜面移動している重心があって,その下を圧を保持した状態で支点が交錯していく意識が大事になります。この様な滑りを俗に「S字」ターンと呼んでいます。
  「重心」と「支点」…この二つの「モノ」が,互いに釣合いを取り続けながら雪の斜面を降りて行く…「安定した滑り」求められる大事なポイントです。このどちらかだけを強調した滑りはバランスを崩すことになります。

  深雪でも整地でも,コブでも…「重心」と「支点」に想いが至って,その状況が意識できれば,「安定した達人の滑り」が可能になる…そんなことを思います。



5/20 (月)  曇り
 
 昨日は朝方少しだけ日が射していましたが…その後,小雨模様に…。そして今朝は曇り空です。もう梅雨?って感じですが,明日は晴れるとの予報が出ています。

          -------------☆★☆-----------

  さて,今日の「2002シーズンを振り返って…」のテーマは“安定した滑り”の第2弾で「重心の軌跡」です。
  昨日の話で,「“バランス”というのは,ナニか二つ以上のモノがあって,それが互いに同程度で釣合いが取れている状態」を指す…ということを述べました。“スキー”でのモノのひとつに“重心”があることも…。そこで今日はこの“重心”について考えてみたいと思います。
  
先ず「直滑降」を考えてみると,「“直滑降”とは,斜面上を重心が平行に直線移動すること」です。この時は,落下方向への移動スピードが不規則に早くなったり遅くなったりしない事,そして,進行方向左右に重心位置がブレないこと,が「安定した滑り」のために必要になります。つまり,「前後・上下」のバランスが大事になります。コブやうねりがある場合は,極力その形に影響されず,重心の上下の振幅幅が小さくなるようにすることです。普通はこの時に,目でコブを見て,自分から脚を曲げたり伸ばしたりしがちですが,「重心…重心…」という風に重心の移動軌跡のことを,先ず意識してみることが大事です。
  次に「ターン」でのことを考えてみると,「“ターン”とは,斜面上を重心が平行円移動すること」,つまり「円運動」だと言えます。円運動ではスキーヤーの身体が回転外側に投げ出される力「遠心力」が働きますから,「前後・上下」に加えて「左右」のバランスが大事になります。ここで初めて「重心を左右方向に安定させる要素としての雪面ホールド」が必要になって来ます。この雪面ホールドはほとんどが“エッジング”によって行なわれますが,この「支え」がしっかりしていないと,スキーヤーの身体は円運動をキープできず,横方向に流れて行ってしまうことになります。“エッジングで確保された支点”は「円運動」をバランス良く持続させるための,重心と対峙する一方の「モノ」だと言えます。つまり“ターン”とは「重心」と「エッジングによる支点」との間の力関係を保持し続けながら斜面移動していくこと…だと言えます。この両者のどちらをどのように優先させるか?ということがいろいろなターンを決めることになります。
  先ず,どの様な雪面ホールドをするか?ということを優先させると…つまり,エッジングをどの様な要素であるいは質で行なうか?によって,それとバランスのとれた重心の移動軌跡が行なわれます。「重心」の移動軌跡は,この雪面ホールドという「モノ」の要素や質によって,「バランスを取る」という側面から自然に決まってくるのです。どちらかというと,スキーの移動軌跡を重視する滑りのときに多用されますが,このことによって重心の移動軌跡は不規則になる側面を持つことになりますので,安定性は犠牲になりがちです。でもレースの世界などでは決められたラインを滑ることが要求されますので,この「雪面ホールド優先」の滑りが多くなります。
  一方,どのように重心移動をするか?ということを優先させると,それをスムーズに行なうための雪面ホールドの形態が決まってきます。ある方向にある速度で重心を持って行こうとすれば,それに合った雪面コンタクトがされてバランスが取れるのです。好むと好まざるとに関わらず,横ズレ要素の多いターンや,切れ要素の多いターン…といった滑りが,斜面条件に合致した形で自然に現れて来る…と言えます。フリー滑走や深雪を滑る時などはこの滑りが多用されます。スキーの移動軌跡や,ターンの質がある程度犠牲になっても,安定性を重視した滑りをしようとすれば,「重心移動軌跡優先」の滑りが大事になる…ということです。
  実際には,どちらかだけを優先させ,一方は無視する…ということはありませんが,この様な見方もできる,ということです。
  この様に,“スキー”を安定した状態で滑る…という側面から見てみると,重心の移動軌跡をできるだけ滑らかにスムーズに行なうこと,が大事なことが分かります。これはなにも“スキー”だけに限ったことではなく,飛行機や自動車などの走行や,いろいろなスポーツでの身体の合理的な動きなど,運動する物体全てに共通することです。
  重心の移動軌跡…そんなことも考えながら滑ったシーズンでした。(^I^)


5/19 (日)  曇り
 
 今朝は久しぶりにチョッと明るい空が見えている白馬です。(^I^) ところどころ,白馬連山の稜線や残雪も雲間からのぞいています。

          -------------☆★☆-----------

  さて,ここ数日,「2002シーズンを振り返って…」のテーマが“感じる”…で,ちょっとシーズンを振り返る…から逸脱しかけていますので,本来のテーマに戻りたいと思います。(=_=;)
  …で,今日のテーマは“安定した滑り…バランス”についてです。
  私たちがいろいろなフィールドで“スキー”を楽しむ時,先ず第一に,自分が挑戦しようとしている斜面状況でどういう滑りをしたら安定して滑れるか?ということを考えます。余裕ができてくれば,少し冒険的なこともしてみようかな?という気持になるにしても,先ずは慎重に安全性を考えます。つまり,今眼前にある斜面でできるだけバランスを崩さず,安定して滑りたい…という気持になります。ここで始めて,「安定して滑るための“技術”」…について考えることになります。“技術”…というのはそういう側面を持っていると思います。
  そこで,「安定して滑るための“技術”」とは一体どういうことなのだろうか?を考えてみるといろんなことが見えてきます。“安定”という言葉の意味は,辞書によると 『 物事が、落ち着いていて、激しい動揺や変化のない状態にあること。また、そのような状態にすること。物理学で、平衡状態に微少な変化を与えた時に、もとの状態からのずれの小さいこと。 』 ということだそうです。そこで,“スキー”にこれをあてはめてみると,「スキーヤーの身体が,雪の抵抗を受けても落ち着いていて,動揺が無く,斜面移動がスムーズに行なわれること…」が安定している,ということになります。つまり,滑走中,身体をぎこちなく動かしたり,雪の抵抗が急激に来るような操作をしたりして,バランスを乱す要因を作らない…ということです。「移動」という意味での「動く」でなく,身体の部位を動かす,という意味での「動き」は,平衡状態を破ることにつながりますから,極力避けることが「安定したスキー」のためには必要だということになります。

  ここで,「安定」のためには,「バランス」を取る,ということが大事であることが解ります。この「バランス」…実は,ある二つ以上のモノの間で,その大きさ,重要さなどが互いに同程度であることなのです。つまり「ひとつのモノ」だけではバランスは有り得ず,二つ以上のモノが必要になります。スキーで“滑る”というのは,雪の面の上をなめらかに移動する…ということです。そのためには「重心」や「支える点」の意識を持ちバランスを考えることが大事になります。私は,“スキー”では,「重心」と「支える点」そして「雪の圧を受ける点」の三つが,バランスを考える上での重要な「モノ」だと思っています。
スキーの名手「マルティン・グガ○ック」も「スキーはバランスが大事…自分で動いて力を加えるのではなく,雪からの力を受け止めること…」と同じことを言っていました。
  “安定した滑り”…このことを考えてみると,“バランス”がキーワードになり,そしてそのバランスを取る上での「重心」,「支点」,「着力点」の三つの要素が大事になる…そんな風に思った今シーズンの【TOK】でした。(^I^)



5/18 (土)  小雨
 
 今朝も小雨が降っていて,まるで「梅雨入り」を思わせる白馬です。
  昨日は久しぶりに約1キロ,泳いで来ました。水の中に入ると無重力状態に近いものを感じますが,これが泳ぐ事の快感のひとつかな?と思いました。(^I^)

          -------------☆★☆-----------

  今日の「2002シーズンを振り返って…」は“感じる”…の,その4です。

  “感じる”についていろいろ調べてみました。「支点探しツアー」での体験…“感じる”時の筋肉の動きが,何かをしようとする時の筋肉の動きと,ものすごい違いがあることに気付いたからです。“感じる”ということはどういう意味を持っているんだろうか?それが“スキー”というスポーツにどういう意味を持つんだろうか?という興味が湧いたのです。
  私たちは「筋肉は身体を動かすために使うもの…運動器」という認識があるのですが,それだけではないようです。「筋肉の表面は温度や圧を感じ取るセンサー…感覚器」でもあるということです。感覚器としての足裏が,そこで感じた圧の場所や方向そしてその量といった情報を,的確に神経系に伝わるようにするために働く…ということです。これは,あきらかに脳から指令が下って筋肉をこのように動かせ…というような随意的な運動とは異なるもので,ある意味で“感じる”ことで自然に起こる不随意的な運動,と言っていいのかもしれません。
  しかも,センサーとして筋肉が最高の働きをするには,そのコンタクト場所における「圧の量」が大きく影響を及ぼします。強過ぎても,弱すぎても,その情報は伝わりにくいのです。例えば「カステラの柔らかさを人差し指でチェックしようとする時の,腕や指の筋肉の状態」と,「カステラに穴を開けようとしようとする時の,腕や人差し指の筋肉の状態」…を確認してみれば,その違いがハッキリと分かります。センサーがその場所の情報を最も効率良く伝えるためには,そのための適正な圧,があるのです。感覚器として筋肉を使うのか?あるいは運動器として使うのか?によって筋肉の緊張度は全く違った様相を呈するのです。“感じる”ことは筋肉の過度な緊張を起こさず,リラックスした状況を生み,これに反して,何かをしよう…という精神的な緊張は,無意識に身体を固くし,筋肉を異常に収縮させてしまいます。
  私たちの多くは,「カステラに穴を開けるようなスキー操作」をし過ぎていないでしょうか?それでは身体を運動器としてしか使っていないことになります。私たち人間の皮膚と筋肉はいろいろな情報に対して,それを受容し,伝達処理し,素直にそれに反応する…という能力を持っているのですから,その感覚器としての利用もできるようになれば,最高のスキーヤーになれると思います。
  “感じる”ことと身体の筋肉の働き…を調べていたら, 『 …動物が運動する究極の目的は、外界の環境の変化に合わせて、最も生存に適した状態に身をおくことである。その際、外界の環境をモニターするのが感覚器管であり、この情報処理がどのように行われているかが大切…  』という言葉に出会いました。
  “スキー”をすることは,ある意味で「動物本来の姿を確認する事」なのかも知れない…と思った【TOK】でした。



5/17 (金)  小雨
 
 今朝は時おり小雨が降っている白馬です。
  雨の中のジョギング,以前は少し辛かったのですが,最近,気候がよくなったせいか,その状況をその状況として受け入れながら,楽しむように走っている自分を発見しました。(^I^)

          -------------☆★☆-----------

  今日の「2002シーズンを振り返って…」は“感じる”…の,その3です。

  ここ二,三日“感じる”についてUPしていますが,期せずして,「スキー道」を担当いただいている”Dr.N”さんから原稿が寄せられました。その内容は「”スキー道”イメージ」に載っていますが,その中で 『  …「重力を感じながら滑る」を試す機会がありました。その時の滑り…非常に不思議な良い感触だった事は確かです… 』と書かれておりました。
  瞑想の世界でも,この“感じる”ということを通して心のコントロールをしよう…という人たちも居られるようです。確かに私たち人間が何かを感じようとする時は,感性を最大に引き出せるように気持をそのことに集中します。意識を集中することで,雑念を取り払う…とも言えるでしょう。そのことが人間が本来持っている動物的な素直な所作動作を引き出し,自分自身の持っている能力を導き出すことになる気がします。こうでなければならない,アアでなければならない…ではなく,感じるまま,そのままの状況に素直に反応しようとすることが,最もその時の状況に合致した理想的な身体の動きをもたらしてくれる,と思うのです。
  無理しなくてイイ,身体を雪に素直に任せよう…こういう感情で滑っているときは, 雪との一体感があり,マッチしているなぁー!という充実感があります。精神的にもどことなくゆったりとした,大きな満足感があるのです。  こうやって考えてみると,スキーをしていてフラストレーションに陥ったり,どことなく不愉快さを感じたりする時は,自分みずからが何かをやろうとしている時だ…ということに気付きます。やろうとしてできないことが不満の元凶になっているのです。そのまま,あるがままの自分を受け入れず,自分自身でないものをそこに求める時,フラストレーションが溜まるのです。前にも書いたように「〜でなければならない…」という気持が先にあると,雪の大自然を最大に楽しむことはできない,ということにもなります。
  私たちが“スキー”をする目的はいろいろありますが,その目的が「気持ち良さ」や「リラクゼーション」だったり,「大自然との会話」…だとしたら,まず“感じる”ことから始めたらどうだろう?。“スキー”を通して瞑想する…とまでは行かないにしても,そんなことを思った【TOK】でした。(^I^)


5/16 (木)  曇り
 
 今朝は曇り空の白馬です。これから明日明後日と雨模様になるそうです。雨が来る前に仕事の手順を変えて,ジョギングに行こうかな?と思っています。

          -------------☆★☆-----------

  今日の「2002シーズンを振り返って…」は“感じる”…について,その2です。

  さて,「支点探しツアー」で,“スキー”が最も安定する場所を探し出す…ということをやってもらうと,皆さんの滑りがそれまでの滑りと違って,リラックスして見える…ということを昨日お話しました。
  このことがなぜ起こるのか?ということを考えてみると,「雪の状況を足裏で探り,感じ取ろう…」とする意思が働いている,ということが大きな要因となっているように思います。レッスンの中でも皆さんにお話しましたが,足裏で感じた情報の内,「筋」を通しての情報は,スキー板⇒スキーブーツ⇒足裏⇒足首⇒下肢⇒大腿⇒腰…という風に伝わっていきます。神経系の伝達はこれとは少し異なり,足裏で感じた情報が電気信号となって一瞬の内に脳に伝わると思うのですが,雪の圧的な負荷情報は「筋肉」を通して,足裏⇒下肢⇒腰…という風に伝わるように思います。学問的にこのことがどう説明できるか?は解りませんが,私の感覚としては,下肢から上半身へ…という「情報伝達の方向性」がキーワードのように思うのです。
  一方,「制御するために身体を働かせる…」という運動は,自分の意志を,能⇒上半身⇒下半身⇒足…という風に伝えるもので,その方向は,上半身から下肢へ…という流れになります。先ほどの“感じる”ということとは,全く逆方向の伝達が起こることになります。
  この伝達の方向の違いは,「〜する」ということと,「〜される」という言葉で表わすことができます。私がことある毎に述べている【Letスキー】は「〜される」という感覚のものです。一方「〜する」というのは【Doスキー】です。【Letスキー】は,このように雪からの情報を足裏で感じキャッチする,ということが先にあります。そして身体がその状況に最も適合した形でそれに反応する…というものです。ですから,自分の置かれた環境で対応し得る,最も理想的な形がそこに現れてくるのです。“感じよう”とすることが,外からの刺激を知覚し,生理的な反応をするだけでなく,それにより心を動かされ,なんらかの感情を抱く…ということが起こり,精神的な安心感や,リラックスを生むのだと思います。この“感じようとするスキー”は,「何か行動を起こす」という事では得られない不思議な感覚をもたらしてくれます。まさに大自然の摂理に身を委ね任せている…とでも言えるような…。
  過日「自然体のスキー」で述べたような,自然との一体感,マッチングの楽しさ…ということも,その根底には“感じる”ということがあるような気がします。



5/15 (水)  晴れ
 
 今朝も穏やかに晴れた白馬です。緑の色が一日一日と濃くなっていきます。緑色の多さを最も感じる季節です。(^I^) 
  
          -------------☆★☆-----------

  さて,今日の「2002シーズンを振り返って…」は“感じる”…について。

  このテーマは今シーズン最も強く印象に残った事のひとつです。「人間の身体の神秘」に触れたような気がしました。
 “感じる”…という言葉は,辞書によると,「五感で刺激を受ける」という“feel”,「ある印象・感じを受ける」という“sense”という意味があり,外からの刺激を知覚し,生理的な反応をするだけでなく,それにより心を動かされ,なんらかの感情を抱く…ということだそうです。五感の内“スキー”に直接結びつくものは,「視覚,触覚,聴覚」の三つですが,この中でも“触覚”の持つ意味を考えさせられたシーズンでした。
  “スキー”が最も安定する場所を探し出す…という,「支点探しツアー」をレッスンの初めに行うことが多かったのですが,この時「足の裏で感じ取る」ということを,皆さんに体験していただきました。そして,それを通して,『スキーを制御するために身体を働かせる…』ということと,『スキーや足裏を通じて,感じ取るために身体を働かせる…』ということでは大きな違いが出る,ということが解ったのです。
  スキーを制御するために,何かの操作や動作をしよう…という意識の前者の滑りでは,往々にして身体の動きがぎこちなく見えます。滑り手の意識も「こうやろう…アアしよう…」とするため,そのことがうまくいくかどうか?に気が取られ余裕が無くなります。後者の場合は,ただ雪とスキーに任せているだけですから,身体の動きがリラックスしている様に見えることが多いのです。心の持ち様も静かな感じで気負いが無くなります。「支点探しツアー」では後者の「感じ取るために身体を働かせる…」という気持が前面に出ます。つまり“感じている”わけです。
  滑っているときの,スキーの動きの違い,そして気持の違い…この差は一体ナニが原因で起こるのだろう…?。それを考え続けたシーズンでした。
  この続きは,また明日…。(^I^)



5/14 (火)  快晴
 
 快晴の気持いい朝です! 
  先日,新緑の木々の中をジョギングして来ました。新緑が本当に美しく,気持良く走れました。人類祖先の「猿」の頃,緑の中で生活していた頃の記憶が人間の身体のどこかに残っていて,そのことが「緑の中」に居ると安心できる…ということと関係があるとか…。
  
  雪サブさんのホームページ
「NEWモデル情報」に,この春行なった“2002OLSSオフ会”の時の「スキー試乗結果」をUPして頂きました。試乗データはスキー選びに欠かせませんので,みなさんの参考になれば嬉しいです。もちろん,人によってそれぞれフィーリングが異なりますから,選択のひとつの参考…ということで見て欲しいと思います。いろいろなホームページにも,滑走データが載っていますが,OLSSとしては,「雪サブさん」のホームページに協力し,役に立つ情報のお手伝いをさせていただきたい,と思っております。

          -------------☆★☆-----------

  さて,今日の「2002シーズンを振り返って…」は“ズレと切れ”…について。

  昨日のテーマとも関連するのですが,私たちの意識の中に「上手なスキーヤーは切れていてズレは無い!」という見方があるように思います。検定でも「ズレルよりはズレの少ない方が点数がイイ…」というようなことも言われたりします。二本の線をきれいに残した「レールターン」がうまいことの証明であって,この線が少しでもズレた形跡があれば,失敗したターンだ…というような評価をする人も居るようです。でも,みなさんの中にも経験された方が大勢居られると思いますが,二本の線を雪上に残すのはある意味で簡単なことです。トーションが強めの板を使い,整地された緩斜面なら…。スキーの持つ性能が「二本の線」を可能にしているだけの事だ…と言えなくもありません。
  斜面が変わったり,雪質が変わったりすれば,二本の線が乱れるのは当然のことです。レースの世界ならばコンマ1秒を競うわけですから,こういった失敗は手痛いミスになります。でも私たちが目指す“スキー”とはそれとは違うと思います。「安全性」,「快感」,「自然との一体感」,「生涯スポーツ」…という視点からスキーを考えれば“ズレ”は必要ですし,実用的でもあります。
  良く良く考えてみると,「スキー板全体がズレる滑り」があります。そしてその対極に「全くズレの無い滑り」があります。でもその中間に「ズレている部分とズレない部分が共存する滑り」もあるのです。「カービング」と言葉が使われ出す以前は「切れる滑り」という言葉が良く使われました。実はこの「切れる滑り」というのは,「テールが横に流れていない滑り」,「テール部分の直進性の良い滑り」…という意味でもあったのです。まさに,「ズレている部分とズレない部分が共存する滑り」のことも含んでいた…ということです。
  今シーズン,レッスンをしていて思ったのは,いろいろな斜面で応用が利く滑りで,私たち一般スキーヤーが修得しなければならない要素は“ズレと切れをうまく使う”ということだ…ということです。ある意味で「カービング神話」からの脱却,ということです。
  「あの人…うまくずらせられてスキー上手だね!」という風な会話が聞けるようになれたらイイなぁー…と思った【TOK】デシタ!(^I^)



5/13 (月)  晴れ
 
 今朝は気持のいい朝です。好天に誘われてチョッと散歩に行って来ました。レンゲやスミレがたくさん咲いていました。デジカメで撮ってきたスミレの写真を見ながら,ナント言うスミレなのか探してみましたが,あんまりたくさんの名前のスミレがあり,ビックリ! 結局イチバンにているのが「ミヤマスミレ」でした。(^I^)
  
          -------------☆★☆-----------

  さて,今日の「2002シーズンを振り返って…」は“応用の利く滑り”…について。

  昨日,用事があり,スキー教師仲間の“K.M”さんのお宅に伺いました。そこでコーヒーを頂きながら,昨今のスキー事情についていろいろお話を伺いました。
  このシーズン,最近注目の新しい板を買われてカービングターンを体験されたそうです。「…確かに以前に比べれば簡単に切れの良い滑りができるが,それは,ある整備された特定の斜面での話であって,一歩悪雪やコブ,深雪に入れば,もはやカービングターンだけの世界ではなくなる。“スキー”というスポーツの楽しみはそんなに狭いものじゃない…もっといろいろな斜面でいろんな事が楽しめ,ワクワクできる要素を持っているものだ…」というようなお話をされていました。
  “K.M”さんがおっしゃるように,「カービング要素」での滑りだけがスキーではない,と私も思います。もっとズレながら滑る事の快感や,ゆっくり滑ることの楽しみを味わうべきだと思います。しかし,カービングスキーの出現が,体力や運動体験の少ない人達に,容易に「回ることの楽しさ」を可能にさせてくれた…というプラスの側面も認めざるを得ません。ですから,昨日の日記でも書いたように,「〜〜でなければならない」ということではなく,いろいろな要素のものを体験し,身に付けることが大事だと思います。
  このことを考えていたら,車の運転を思い出しました。「オートマチック車限定免許証」というのがありますが,この制度は,実用的に多くの人に運転の機会を与えることになったわけで,それはそれで素晴らしいことです。でも,マニュアル車を運転する楽しみも,またそれはそれで確かに有る…そう思います。スキーの滑り方の要素が,オートマチック車とマニュアル車の違い…というほど極端でないにしても,いろいろな運転ができることが,楽しみの幅を広くしてくれることだけは確かです。スキーの場合は,アスファルトのきれいな道路だけでなく,砂利道あり,ハザードあり…の悪条件の場所を滑る機会が多い,という事実もありますし…。
  私たちレッスンを担当する立場の人間は,そういう意味で“幅広い応用の利く滑り”…をお教えする必要があります。整地でなければ,コブでなければ,深雪でなければ…滑れない滑り,だけではダメです。スキーの習熟度や到達度を評価する「検定」においては,特にこのような視点から「観る目」を養う必要があると思います。
  じゃあ,今の検定であまりにも言われ過ぎている「カービング要素」って?一体何なんだろう?…そう思ってしまう【TOK】でした。



5/12 (日)  晴れ
 
 今日,日曜日の朝…里には柔らかい陽射しが注いでいます。(^I^) 山には「代馬」の“雪型”も現れ,苗代をかく姿があちこちで見られます。
  さて,今日の日曜…みなさんはいかがお過ごしですか?

          -------------☆★☆-----------

  さて,今日の「2002シーズンを振り返って…」は“〜〜でなければならない”…について。

  今シーズンもありがたいことに,いろいろ大勢の方々と滑る機会に恵まれました。(^I^) 今年初めてスキーをやってみよう,という人から,技術選に出場する人まで,本当にその目的も経験も大きく違う人たちと滑らせて頂きました。
  そして,それらのレッスンを通して,何度も言うように,「人には様々,いろいろな人が居られる。スキーをする目的も,道具も違うし,運動経験も異なる。そういう人達に,アアでなければならない,こうでなければいけない…
という教え方は通用しない…」と強く感じました。
  例えば,私が今シーズン,有効だと思ってお教えした“エネルギーライン”についても,これだけが正しい…という姿勢は許されないのです。いつも,この他にも大事な要素があるかもしれない,もっと有効な手立てや方法があるかも…という姿勢を崩さないことが求められるのです。もちろん,これまでレッスンでいろいろ実践し,効果があった,役に立つ…と思われることを捨てる必要はありませんが,それよりさらに良い方法があるのではないか?と常に最善を探す努力は続けなければなりません。人さまにお教えするときに,いかに多くの指導用語や滑走イメージを持っているか?そしてそれをどう分かりやすく説明できるか?という経験の豊富さが求められる理由はここにあります。そして,生徒さんに自ら,「アアそうかぁー?!こうした方がイイのか!!」と気付いていただくことなのです。アアしなさい!,コウしなさい!…という「断定的指示」ではなく,アアしてみたら?,コウしてみたら?…という「提言による思考促進」をすることです。みずからが,与えられたテーマを考えることで,自分で答えを見つけ出していくことが大事なのです。みずから見つけ出した回答はしっかりと身に付き,それ以降のスキーライフで大きく花開くのです。
  「〜〜でなければならない」というような,断定的に結論を押し付けないレッスン…それを心掛けたつもりの【TOK】でした。(^I^)



5/11 (土)  曇り
 
 今朝の白馬の天気は曇り…。でも明日には晴天が戻って来るようです。
  スキーシーズンは終わったものの,これから白馬の里は木々の緑が美しく,草花が咲き乱れるイイ気候になります。
          -------------☆★☆-----------

  さて,今日の「2002シーズンを振り返って…」は“ジュースを浴びる”について…。

  昨日の日記で「エネルギーライン」…のお話をしました。斜面を移動して行くと雪から圧がやって来る,そして着力点から重心方向に向かう一本のラインがイメージされ,それを意識して滑ると,その時々の状況に合ったフォームが自然に形成され,見ていても安定感があって気持ちイイ…ということでした。
  実は今シーズン,私のレッスンを受講された方々から多くの E-mail を頂きました。ほとんどの方が“オレンジターン”と“エネルギーライン意識のターン”についてのコメントでした。中には実際の雪上レッスンはお受けにならず,このホームページだけをご覧になって,ご自分でトライされた方からの E-mail もありました。その中でみなさんが感じられたことをピックアプしてみますと次の様です。

   『 …落ちるに任せる滑りを心がけてみました。そうしたら(これは自分でも本当に意外なことだったんですが)感覚的には真冬の最良の状態の整備されたゲレンデを滑るのと、さほど違わない楽しい気分で滑ることができました。今まで何度も春スキーに出かけたことはありますが、どちらかというと気分を味わいに行くような感じで、今回のように(技術的なことも含めて)満足な滑りを楽しめたというのは初めてだと思います。楽しいスキーに雪質やゲレンデの状態は関係ないんですね、と言ったらちょっと言い過ぎかもしれませんが少なくとも影響度はかなり低い順位ですね … 』 “Kou”さん。
   『  …とりわけお皿(受け皿)と棒(エネルギーライン)のお話の後は、滑らかさと安定感が出てきたようにに思います。初めての板も三本はいてみましたが、ここでもLETスキーの適応力を実感しました。滑りだしの数ターンは支点探し、後はスキー任せで着力点をいろいろ変えながら板の違いを楽しみました。どんな斜面、どんな雪質、どんな板であろうとも全く同じスキー操作(もちろんDO的ではない)で対応している自分を発見しました。違いは脚による圧の調整の微妙な加減かな....。』  “K.M”さん。
   『 …何よりも「達人の滑り」、雪の力、地球の引力を使ってのスキー技術のすばらしさです。やれ、悪雪だ、わだちだ、湿雪だ、コブだと忌み嫌いますが、LETスキーはそれらを何ら問題としないものだということを正に実感いたしました…』 “Kon”さん。
     『 …きょうは体にオレンジがかかって真黄色になりました。ん〜いいかんじ。悪雪なんか気にもならず、中回りでLETスキーしたら楽しいこと楽しいこと。こんな感じになったのはスキーをはじめて25年、初めて感じました… 』  “Ter ”さん。
   『  …TOK先生のHPでおしえていただいたオレンジターンを自分なりに練習して参りました。まず切替時に、谷足の下でつぶれているオレンジが復活してくるようにイメージしてみました。すると不思議なくらいスムーズにニュートラルポジションになるではないか! そして山足でオレンジをつぶしていくときれいに谷まわりがはじまりました。それもズレがほとんどなく!なんか、キツネにつままれたよーに簡単に切替ができてしまいます。今までの自分の意識は…「後ろよりの腰を斜め前にだしてフラットにして⇒山足のインエッジのトップを早く雪面に食いつかせ⇒内足も同調させて⇒足首をしっかり曲げて⇒外肩が後ろにおいていかれない様に・・・」なんて、いろいろ意識しながら滑ってました。それなのにオレンジの意識だけでこんなに簡単にターン出来てしまっていいの?いままでの自分の滑りは何だったの?これでいいの?って感じで午前中が過ぎました。昼食後、まだ半信半疑だったのでコブと新雪にて実験することにしました。するとこれまた簡単にターン出来ちゃうではないか!大嫌いな新雪なはずなのに自由自在にターンできちゃうんです。ん〜偉大なるオレンジターン殿!!…』 “Syu”さん。

  オレンジやエネルギーラインを意識して滑ることは,【Doスキー】でなく【Letスキー】をメインにする…といことに他ならないのですが,そこで大事になる感覚は「雪の圧を受け続ける」ということです。実は,今年のレッスンで,このことをイメージアプのための大きな収穫がありました。(^I^) それは“オレンジジュースを身体で浴びるイメージ”という言葉でした。雪の中にジュースを染み込ませる意識ではなく,身体に浴びる…ということで,雪の圧を受ける,という意識が出てくるのです。前出の E-mail を下さった方々は,その事に気付かれたのだと思います。
  悪雪やコブが楽になった,スキーを楽しめる期間が長くなった…この言葉を頂き,教師冥利を思った【TOK】デシタ!(^I^)


5/10 (金)  曇り
 
 気温13℃で少し肌寒い白馬です。天気は曇り…この週末一杯続くらしい…。
  トップページにも書きましたが,今朝起きて顔を洗っていたら「ツバメ」が帰って来ていました。今年は少し遅いのかな?と思っていただけに嬉しさ一杯でした!(^I^)。毎年同じ所に巣を作っています。どことなく家族の一員のような気分で,今年も夏過ぎまで一緒に過ごすことになります。
  我が家にはこの他に「すずめ」の巣があります。ベランダの上の軒下に数年前から巣を作っていて,毎日のように私たちの目を楽しませてくれています。どうも「ツガイ」のようで,少し太めのオスと,やせ気味のメスが,毎日甲斐甲斐しく巣づくりをしています。たかが「すずめ」でも,毎日見ていると可愛いく思えてきます。

          -------------☆★☆-----------

  さて,今日の「2002シーズンを振り返って…」は“エネルギーライン”について…。

  昨日の日記で「平均的なスキーを使っての操作」…のお話をしました。すると,そこには「外向傾」という形が自然に現れてくることも…。
  何度もしつこいようですが,この「外向傾」という形,あるいは姿勢は自分で作るものではなく,あくまで雪の抵抗を捕えることで生まれてくるものですが,この姿勢は人それぞれ違いがあります。前にも書いたように「使っている用具」,「滑っている斜面」,「スキーヤー自身の身体的特徴」によって違いが出てくるのです。同じ斜面を滑っていてもフォームには違いが出てきますし,逆に同じだったオカシイ…ということも言えます。
  では,うまいスキーヤーに共通したモノは無いのか?もしあるとしたらソレは何か?ということになります。スキーそのものの動き?,スキーヤーの安定性?それともダイナミックさ?…いろいろな要素があり迷うところで「ひとこと」でソレを言い表すのは難しい…とこれまで思っていました。それが,今シーズン自分なりに見えて来ました。実はそれは“エネルギーライン”という言葉で表現されるバランスの取れた滑りでした。この言葉をみなさんにお話すると,「それは傾け角のことですか?」とか「内傾角?」と聞かれますが,それとは違うのです。

右の図を見てください。支点を中心として,スキーがたわんでいる状態で,スキーヤーが斜面移動して行くと,雪面抗力を受け止めることになります。支点より前の部分にこの抵抗を受けますが,その集約される位置を“着力点”と呼ぶことにしました。すると支点を中心として着力点が下からの圧を受けるので,テコのように力が働きます。そのテコが働く方向は重心方向に向かっています。この力の成分を“エネルギーライン”と呼ぶことにしたのです。ですから,エネルギーラインと内傾角は同じモノではありませんし,角付け角とも違うものです。
  これを意識しだしてから,多くのスキーヤーの滑りを見ていて「うまい!」と思わせる滑り手のスキーには必ずこの“エネルギーライン”があることに気付きました。雪面コンタクトがしっかり取れていて,安定したスキー操作をしている人にはこのラインが見えるのです。同じ様にスピードを出して滑っていても,全くこのラインが見えない人もいますし,時々見える人もいます。ターン前半には見えないけれど,後半になると見えてくる人も…。また,大回りでは見えるが小回りでは見えない人もいるのです。
  ここでは,着力点からの力を重心で受け止める…と説明しましたが,受け止める身体のポイントはいつもいつも「重心」とは限りません。ターン円弧の大小や,運動の遅速によって,膝頭であったり,首のうしろだったり,くるぶしだったり…その場所がいろいろ変わります。これを身体の“受け皿”と言っています。“受け皿”だけでなく,“着力点”も同じ様に変わります。ですから,その時々のシチュエーションに合った,いろいろな組み合わせのエネルギーラインが出来上がるのです。そして,一度出来たらそのまま変わらないか?といえばそうではなく,一ターンの中でも,状況に応じてそのラインが変化することもあります。ラインが伸びたり縮んだりすることもあります。人間の身体とは不思議なもので,このラインがどこからどこにできているか?でその時々のフォームが違って来ます。その時々の状況に応じた素直なフォームが出来上がるのです。
  「雪からやって来るエネルギーを,しっかり受け止めることができる人」にだけ見えるこのラインは,スキーのうまさと大きな関係にある…そう思います。このラインは“「身体の特徴・用具の特性・シチュエーション」の三要素”がうまくマッチしている時に現れるもので,バランス取りのうまさ,とも言えるものです。スピードが速い時だけでなく,遅い時でもこのラインは見えますし,スキーヤーだけでなく,上手なスノーボーダーの滑りの中にも見えます。地球の引力をどう受け止めるか?ということと大きく関係していると思います。

  今年のスキーレッスンで毎日のようにお話させていただいた“エネルギーライン”は,「大いなる地球の力」を感じ取るための,ひとつのパイプ…そう思っている【TOK】デシタ!(^I^)



/9 (木)  うす曇り
 
 今日は気温も16℃とチョッと暖かい朝です。
  柔らかい春の陽射しに,リンゴの花もきれいな顔で答えています。(^I^) 白馬も,もうすっかり春の気配です。

          -------------☆★☆-----------

  さて,今日の「2002シーズンを振り返って…」は“外向傾の再認識”について…。

  昨日の日記で「自然体のスキー」のお話をしました。そして,それぞれ個々のスキーヤーの置かれている状況を生かしたスキー…ということに言及しましたが,その中で用具のことを考えてみると,“スキー”という道具を使って雪山の中を歩く,という時代から変わっていないことがあることに気付きます。それは「スキーの形状」です。いつの頃からか?という正確な年代はわかりませんが,多分この世にスキーが出始めた頃から,「靴の位置より先が長く後が短い」という形はあったと思います。そして,サイドカーブがターンするという観点から付加されるようになりました。この二つの形状は,これからも“スキー”というスポーツを語るときに抜きにして考えられないことだと思っています。以前,この形状を無視し,全く逆のコンセプトで,「前が短く後が長いスキー」と「センターが両端より幅広いスキー」が作られたことがありました。どちらのスキーにも乗ってみましたが,全然違う乗り物に乗っている感じでした。そのどちらのスキーも,自分でスキー板そのものを回さない限り,行きたい方向に進めない…というモノでした。気持ち良く円弧やシュプールを描く…ということができませんでした。そして,今思うのです。「トップとテールの長さに違いがあり,トップが長い」ということと,「中央がくびれたサイドカットがある」という二つの特徴を無くしたら“スキー”というスポーツと言えないんじゃないかと…。
  もし極端な言い方をして,「この二つの特徴を持つ用具を使う…ということが“スキー”の最低条件」だとするならば,用具の立場からは,この二つの特徴を持っていることが「平均的なスキー板」ということになります。すると,この平均的なスキー用具をどう使うか?という操作の要領も見えて来ます。ターンをするには「側圧」が必要だ…ということです。その結果スキーが「たわみ」,一本のスキー板の中の「圧分布の違い」が生まれ,それをコントロールすることで円弧調整が可能になる…ということです。
  「側圧」を最も合理的に作り上げるには,これまでずーっと言われ続けてきた“外向傾”が大きな役割を果たしてくれます。その形云々ではなく,雪とのコンタクトをしっかり作り,安定した動きをキープするには,多かれ少なかれこの“外向傾”が必要です。切れるスキー,俗に言う「カービングターン」であっても,「スキーがたわんでいる」状況がある限り,この“外向傾”は必要だと思います。
  昨シーズンもそのことを,折に触れ皆さんにお話して来ました。今シーズンは“マルティン・グ○ニック”氏と“パトリッ○”氏という,お二人と,特にことについて意見を交換する機会がありました。彼ら二人とも,「いくらカービングスキーが主流になっても,以前からの“外向傾”の重要性は色あせることは無い。むしろカービング時代だからこそ“外向傾”が大事だ…」と話されていました。昔,名人といわれている人の滑りにはある共通点があると思います。。それは“ナチュラル”ということです。つまり無理に行なうのではなく,結果として現れる“形”なのです。それはいくら状況が変わっても,その“形”の中に見える“外向傾”です。お二人も20数年前に作られた深雪の映画「白いファンタジー」を見ながら同じことを話されていました…。

     -------------☆★☆-----------

  注:「白いファンタジー」は,小賀坂スキー製作所が約25年前作った映画で,当時大絶賛を受けた作品です。約20分の上映時間ですが,そのほとんどが新雪滑走シーンで,語りは一切無く,BGMとして当時のフォークソングが流れていて,この映画を見たあとは決まって「深雪滑りたいなぁー!」と云う声があがったものです。このビデオ版を見たグッ○ーに,このコピーが欲しい…と言わしめた作品でもあります。いま見ても古さを感じさせない名作だと思います。



5/8 (水)  小雨
 
 今日もチョッと冷たい小雨が降っています。午後からは上がるようですが…。

          -------------☆★☆-----------

  さて,今日の「2002シーズンを振り返って…」は“自然体のスキー”について…。

  今年の私のレッスンテーマとして,自分なりに“スキーの三要素”というものを考え,それをメインテーマとしました。それが昨日も述べた“「身体の特徴・用具の特性・シチュエーション」の三要素”です。
  実は昨年の9月の教師日記で“スキーの合理性”に付いて考えたことがあります。そこで結論として思ったことは, 『 “合理性”は各自の“志向や目的”によってそれぞれ重要となるポイントいが違ってくるが,「雪の自然で行なうスポーツ」であること,「“スキー”というある特徴ある形の用具を使うスポーツ」であること,そして「人間が行うスポーツ」であることが共通している以上,この三つのポイントはその基本として欠かせない要素だ…』ということでした。このことがずっーと頭に有り,つまりそれはどういうことか?を考えた結果“「身体の特徴・用具の特性・シチュエーション」”という言葉が出てきたのでした。その目的が「競技」であれ,「技術選」であれ「一般基礎スキー」と言われるものであれ,そしてたんなる「楽しみのスキー」であったとしても,それらに共通していることは「人間が雪の上でスキーを使って行なうもの」…ということなのです。
  これら三つの要素がどのように組み合わされるか?で“合理性”が少しづつ違った側面を見せることになるのですが,どれひとつでも完全に無視することはできません。そのどれもが必要だけれど,どういう比重でマッチングするか?ということが目的別の合理性を決定するのです。
  そういう訳で,私たちスキースクールの教師がどういうレッスンを行なうべきか?という,その立場も,昨日の話のように「生徒さんの志向」に大きく左右されることになります。“「身体の特徴・用具の特性・シチュエーション」の三要素”のうちどれをどのようにブレンドしたレッスンをするか?が決まってくるのです。
  
  そして,今シーズンこのことを考えながらレッスンをしていて感じたことがあります。上記三要素のブレンドの割合…についてです。例えば3人の生徒さんを担当したとします。その3人がすべて同じスキー板を使っているわけでも,同じ体格をしているわけでもありません。年齢も違えば,これまでやってきたスポーツなどの経験も違います。もし目的が同じだったとしても,このように,いろいろ違った経歴をお持ちであれば,それぞれに合った合理的なスキー指導も違って当たり前です。するとたとえスキーヤーの志向や目的が同じでも,突出した割合のブレンドレッスンをするのは危険かもしれない…ということに気が付いたのです。そこで,「基本の基本」というのは,“「身体の特徴・用具の特性・シチュエーション」の三要素”の全てさえも“一般的に平均的なモノ”を前提としたレッスンとするべきだ…ということでした。まず,全ての生徒さんが「平均的な人間」であり,用具も平均的なモノ,滑る場所も平均的なトコロ…から始めるべきだと…思ったのです。
  これを私は“自然体のスキー”だと感じました。特別でないところから,特別なものが見えてくるにしても,特別でないスキーをまずお教えすることが大事だと…。“感じる”というレッスンは,そのことが根底にありました。特別なモノをお持ちの方はその方なりに,持ってない人は持ってないなりに,それぞれ“感じる”ことができるのです。その感じ方はそれぞれ違うにしても,そのフィーリングはそのひとに固有のものとしてあるのです。コレこそがその人なりの“自然体のスキー”ということです。
  “支点探しツアー”…が今年のレッスンの特徴として出てきた背景は,実はこういうことにありました。そして,その「支点探し」を基盤として,身体が,与えられた用具や雪の状況にマッチした動きができるようにレッスンを進めさせていただいたのです。

  “感じる”スキーは“自然体のスキー”…そう思っている【TOK】です。(^I^)


5/7 (火)  小雨
 
 今日は少し淋しげに小雨が降っています。
  2002のスキーシーズンも昨日で幕を閉じました。今シーズンもいろいろなことがありました。それらひとつひとつの事が,懐かしく思い出されます。これで少しの間「天然雪」とはお別れです。でも,あと6ヶ月もすればまた新しい雪が来てくれます。それまで,少しづつ体調を整えながら待つことにしましょう!(^I^)
          -------------☆★☆-----------
  さて,今日の「2002シーズンを振り返って…」は“あるレッスンの形”について…。
  今シーズンはおかげさまで,本当に多くの方々からレッスンの申し込みを頂きました。これまで教師暦ン十年の中で,最も多くのプライベートレッスンを担当させて頂きました。ありがとうございました。でも,その全ての方々のご要望やご期待にお応えできなかったことを,反省も致しております…(=_=;)。私としては,常に持てる力の全てをレッスンで披瀝させていただいたつもりですが,それが空回りに終わったり,うまく伝わらなかったりしたこともあるようです。これらの反省を踏まえた上で,教える側と教わる側の最もイイ関係…について考えて見たいと思います。

  先ず教える側の姿勢ですが,「生徒さんの志向」を推し測ることです。生徒さんがナニをしたいのか?どういう滑りをどういう目標で学びたいと思っているのか?ということをできるだけ早い時期に見抜くことです。そうすれば,その目的に合ったレッスンの選択が可能になります。そして生徒さんの使っている用具がその目的達成のためにかなっているかどうか?も見極められます。最近,特にいろいろな性質のスキーが目的別に作られるようになりました。中にはハンディとなってしまい,目的が達成できないような用具もあるのです。まず用具が生徒さんの「志向」に合っているかどうか?を見抜くことです。
  次に,「基本技術」と「応用技術」を区別し,いま自分がレッスンしているのはそのどちらなのか?を忘れないことです。往々にしてそのどちらをレッスンしているのかを忘れてしまい,応用的なレッスン展開にばかり走ってしまうことがあります。やはり“スキー”というスポーツに共通の「基本」をベースにすることが大事です。この基本とは“「身体の特徴・用具の特性・シチュエーション」の三要素”を活かす…ということに他なりません。そして,この三要素さえしっかり捕えておけば,その後の目的に合ったスキーイングへと発展させることができるのです。

  教わる側の立場としては,「自分はコレをやりたい!」という希望をしっかり教師に伝えることです。これがうまく行なわれないと,時間の無駄になるばかりでなく,スキーに対する興味さえ失われることになってしまいます。
  そして,私が習う側の気持としてさらに大事だと思うのは,「教えてもらう…うまくしてもらう…」という気持を捨てる,ということです。「高いお金を払ってるんだから,うまくしてもらって当たり前…」という気持でレッスンを受けるのと,「あの教師の言いたいことや滑りを全部盗んでやろう!…それにはいつもリフトに一緒に乗り,質問攻めにしちゃおう!」という気持で受けるのとでは雲泥の差が出てしまいます。「レッスン代を払って盗むの?」と疑問に思う人もおられるかもしれませんが,それくらいの気持で受けるほうが,より積極的なレッスンになり,身に付くということです。教師はもちろん,レッスン代に負けない指導をしたいと思っていますが,習う側の意気込みが,さらにレッスンの質を向上させることになる…ということです。

  こういうことを考えてくると,伸び悩み状態…プラトー状態,にある生徒さんが,グゥーーンとうまくなる理由が解かるような気がします。レッスンを受ける動機がハッキリしているからです。スキーでも「ひと皮剥けるためには,悩むことだ!」という格言が当てはまりますネ。(^I^)



5/6 (月)  快晴
 
 今日も本当に素晴らしい快晴です! 全く雲ひとつない青空が広がっています。
  八方尾根スキー場も,今日が冬の営業最終日を迎えました。数えてみたら昨年の12月16日から今日まで,142日間の営業でした。その内何日滑ったのでしょうか? 私の生徒さんの“某さん”は,八方以外も含めてですが,丁度50日をクリアされた…と聞きました。凄いですネェー!
          -------------☆★☆-----------
  さて,今日の「2002シーズンを振り返って…」は“擬声語”について…。
  よくスキーをする時の感覚を表す言葉として「ギュゥーッ」と踏み込む,とか「シュンシュン」と滑る…とか言うことがあります。
声や音,また状態や様子を言語音で表わした語を「擬声語」あるいは「擬音語」と呼ぶそうですが,これらの言葉も擬声語のひとつでしょう。
  で,スキーにおける
この擬声語はナニを言おうとしているか?を考えてみると面白いことに気付きます。この擬声語…実はいろいろ有って,レッスン等でもよく状況説明に使われています。私はこれらの言い方は「雪面コンタクト」の状況を表していると思っています。コンタクトの時間的な長さ,圧の強弱とその変化…を,どう意識しているか?ということを表していると思います。
  今シーズンの終わり頃,「地球の引力に引かれて滑る感覚」…ということを実践してみたのですが,その時イメージとして浮かぶ言葉は「シュワァーン,シュヮンシュヮン,シュワァーン…」と言う“軽い言葉”でした。それまで“オレンジターン”や“エネルギーライン”意識で滑っている時は,それに比べるとやや重い言葉で,「ギュゥーン,ギュンギュン,ギュゥーン…」という言葉であったり,「シュゥーン,シュンシュン,シューーン…」でした。単に「ワ」という一言の擬音が入るかはいらないか?というだけの話なのですが,気持の上では大きな違いがあることに気付きました。雪面コンタクトの圧が「シュワァーン」の方が「シュゥーン」より少し弱くなり,その分滑りの重さが少なくなって,気持の上でのリラックス感が多くなりました。圧感覚が弱い分,たわみが少なくなり,スキーの切れが悪くなって走りもわるいか?…といえばそうでもありませんでした。どちらかと言えば必要以上の「オーバーコンタクト」にならなくて済み,「適正コンタクト」が得られる状態…と言えるものです。その時の「リラックス感」,「自由感」そして「安心感」は独特で,精神的にものすごく余裕のある滑りをしているなぁー,と感じました。「地球の引力に任せ,その意思に従う…」という素直な意識になった時に得られた感覚で,チョッと不思議な感覚でした。ある意味で【Letスキー】の真髄?と言えるものかな?とも思いました。“達人の滑り”というものがあるとしたら,このような感覚の滑りかな?と思ったほどでした。(^I^)
  私達は,スキーをしている時,いろいろなイメージを持ったり,つぶやいたりしています。それらのイメージやつぶやきは,ある“言葉”として発せられていることが多いものです。普段私たちはどんな言葉で滑っているんだろう?それを考えてみることは,自分の滑りを見直すイイ機会になるかも知れない…そう思った【TOK】でした。(^I^)


5/5 (日)  快晴
 
 今日は雨が上がったばかりのせいか,気温も16℃で爽やかで気持ちのイイ白馬です。
  今年のゴールデンウィークもあと残すところ二日です。こころおきなく“スキー”楽しまれましたか?
          -------------☆★☆-----------
  さて,今日の「2002シーズンを振り返って…」は“トップコントロール”…についてです。
  今年のSAJ指導員研修会のテーマだった「トップコントロールとテールコントロール」ですが,1シーズンを振り返ってこの言葉がどういう意味だったのか?ということを考えてみたいと思います。あくまでも,一スキー教師として感じたことですので,これが私の所属するスキースクールの見解…ということではありません。個人的な感想だということを了解してお読みください。
  たしかにスキー板が「カービングタイプ」になってから,ヒネリ操作あるいはひねられ操作,またズレの意識…というのは少なくなって来ました。…というよりそんなに強く意識しなくても滑れるようになりました。それは「弱い曲げ剛性」と「強いネジレ剛性」という矛盾した性質を一台の板に包含できるようになったからです。たわみが作りやすく,しかも雪面ホールドが良い…という板の出現は,トップ部分での捕えフィーリングを一変させました。ですからスキー全体を充分にたわませておいて,その状態をキープした形ができれば,テールやスキー全体の横ズレを行なわなくても,スキーの先端はエッジングした側に切れ込んでいく滑りができます。カービングタイプのスキーはサイドカーブが深い分,角付けをした状態ですでにたわんだ状態になります。ですから,ニュートラルポジションから次のターンに向かう時は,エッジをターンしたい方向に向けて立てて行けば,スキーのトップ部分が雪の抵抗を受け,意図した方向に回りこんでくれます。舵取り期でもこの状態をキープし続ければターンが持続されます。このことを“トップコントロール”と言っているのだと思いますが,このように「エッジをターンしたい方向に傾けること」と「雪面の抵抗を受け止める」という二つの事がその前提となっているのです。
  そして,ここで大事なことがあります。それは,雪の抵抗を受け止める「場所」(私はこの部分のことを“着力点”と呼んでいます)と別の所に,身体を支える「支点」が必要だ,ということです。もしこの二つの場所が同じになってしまうと,その部分を中心とした回転モーメントが生じてしまうからです。あくまでもスキーのトップは支点を中心として“テコ”のようにターン内側に入り込んでくる意識が必要なのです。これを間違えてしまうと,トップ部分を「荷重点」としてしまう意識が働いて,そこを中心としたテールの横ズレが生じてしまったり,トップ部分を雪面に押し込んでいくような運動要素が生まれ,ブレーキが掛かったような重い滑りになってしまったり…ということになってしまいます。
  「支点」を土踏まずからかかと付近に,「着力点」をスキーのその前方にイメージすることで,“テコ”の腕(アーム)の長さを変える意識が生まれます。その状態で斜面を移動して行けば着力点から身体の重心方向にスキーのトップを押し上げようとする力が生まれてきます。ですから,スキーのトップを雪方向へ押すことによって生まれる圧ではなく,斜面移動によって雪から身体の重心方向へやって来る圧,を求め続ける意識が大事です。「スキーのトップが自分の身体の方向へズレ上がって来るイメージ」が大事なのです。
  つまり【Doスキー】的な雪に働き掛ける運動では“トップコントロール”はできない…ということになります。【Letスキー】的な「雪の力でターンさせてもらう」という意識が必要なのです。

  グッキーも盛んに言っていましたが,「雪の圧を貰う」…このことの大事さを再確認したシーズンでもありました。


5/4 (土)  曇り
 
 今日は残念ながら曇り空です…。気温は16℃ですが…これから雨模様とか…。
  昨日はホームページにどう動画をUPするか…検討していました。動画専門のページを設け,そこに一括してファイルする方がいいのかな…と思っています。なにしろ素人なので,動画に関していいアイデアをお持ちの方がおられましたらご教授ください。お待ちしています!
          -------------☆★☆-----------
  さて,今日の「2002シーズンを振り返って…」は“引出しのリンク”…についてです。
  5/2の日記で,「同時に多くのことを意識するのではなく,まずひとつの事に集中してみる…」ということをお話しました。他の要因を抜きにして,あるひとつのことに集中し,そのことによる得失を体験する…ということの大事さをお話したのですが,時と場合によっては,それが統合された形のフィーリングが大事になることもあります。
実は“オレンジターン”や“エネルギーライン”の意識がそれにあたります。
  “オレンジターン”では“オレンジ”の形をイメージすることで,「支点」と「迎え角」それに「圧の量」が同時にリンクされた形で意識できますし,“エネルギーライン”では「着力点」と「身体の“受け皿”」それに「圧の方向」が意識できます。「支点」,「迎え角」,「圧の量」,「着力点」,「身体の“受け皿”」,「圧の方向」…は,それぞれ単独で意識することも大事ですが,リンクされていればもっと大きな力となります。“オレンジターン”とか“エネルギーライン”という意識はそのことを結びつける時のイメージとして大きな役割を果たしてくれます。云ってみればリンクに役立つ意識…です。
  雪サブさんの掲示板で,「…パワートライアングル!! tokさん、今年はつかってなかったけど…」と書かれておられました。実は,今年の冬は,昨年の“パワートライアングル”に代わって“エネルギーライン”がレッスン用語の大部分を占めました。両者が関連が無いわけではありません。エネルギーラインの“受け皿”をくるぶしに意識すると“エネルギーライン”はそのまま“パワートライアングル”と同じことなのです。どちらも「着力点」,「身体の“受け皿”」,「圧の方向」を意識することになります。“パワートライアングル”もそういう意味で,「ひとつのリンクのためのイメージ」なのです。
  今年のシーズンも,滑走中にどういうことを“イメージ”するか?ということの大切さを感じた1シーズンでした。
  


5/3 (金)  晴れ
 
 今日もイイ天気…。穏やかな風がユラァーー…と吹いています。
  皆さんはどういう休日を過ごされていますか?
         -------------☆★☆-----------
  さて,昨日は「今シーズン最後のひと滑り」…をして来ました。
  ホームページでお世話になっている,”Dr.K”さん”Dr.N”さん,それにお仲間の“Kos”さんが八方に来られる…ということで,一緒に滑ろう…ということになり,この日を私の今シーズン最後の滑りの日に設定したのでした。(^I^)
  朝のうちは雪の条件も良く,気持ちの良いロング滑走を楽しみました。例年に比べれば雪の少ない五月連休ですが,でもゲレンデは空いていて気持良く滑れました。
  約1時間ばかりフリー滑走した後,“Kos”さんが「コブを…」ということで,みんなで挑戦しました。レッスン…ということではありませんでしたが,皆さんの滑りを拝見するとコブでのクロスオーバーに難がありましたので,「重心の下をスキーが通り過ぎる意識を持って滑ったら…」とワンポイントアドバイスをさせて頂きました。「コブとコブの谷間に,ドンッ!ドンッ!…と落ちなくなるね…」という感想を頂きました。モーグルの滑りとは違って円弧を描きながら,スピードコントロールをしながら安全に滑ることが大切なので,その様な感想が聞けたことは大変嬉しいことでした。(^I^) その結果,上体(重心)の斜面移動が楽になり,バランスを崩すリスクもかなり少なくなった滑りをされていました。
  続いて大回りでの感覚を試すことにしました。“エネルギーライン”をどのようにイメージアプし,設定して滑るか?ということが,雪面コンタクトの違いを生み,結局はターン構成に大きな影響を与えることを経験してもらいました。身体の“受け皿”とスキー板の“着力点”,そしてこの両者を結ぶ“エネルギーライン”…雪質や回転弧の大小に関わらず,これが意識できるかどうかが,安定した滑りするためのキーワードになることを実感しました。
  そして最後に,「地球のコアに引かれるスキーヤーとしての自分」…というイメージで滑ってみました。心地良い適度な雪の抵抗感があり,身体もリラックスした状態になれ,雪の自然と一体となっているような…そんな気持の,ゆったりとしたスキーができました。(^I^)
  今シーズン閉めの滑走フィーリングを,“地球の引力に素直に引かれる自分”…という感覚で終えることのできた【TOK】でした!(^I^)
  今シーズンも,おかげさまで怪我無く1シーズンを終えることができました。
  皆さん,ありがとうございました!
     -------------☆★☆-----------
  「2002シーズンを振り返って…」は オ・ヤ・ス・ミ です…。


5/2 (木)  快晴
 
 今日は本当にイイ天気です! 気持ちの良い朝を迎えました。
  午前中ひと滑りして来ます! (^I^)
       -------------☆★☆-----------
  さて,今日の「2002シーズンを振り返って…」は「引き出しの数」について…。
  レッスンを受けていますと,アレ気をつけて!,コレ意識して!,○○考えて!,△△しないように!…といろいろなことを同時に意識しなくてはいけない気持になります。このことが同時にできないのが悩みのタネです。言われたことがすんなりクリアできたら,それこそ直ぐうまくなってしまう気がします。でも,実際には同時にいくつものことに気を配ってすべる事は不可能です。
  ですから,私はレッスンを受ける人に,「今お話したひとつのことに注意して滑って下さい。他の事は忘れて構いません」と云うようにしています。いろいろなポイントがありますが,そのポイントひとつづつに気を配ってすべることのほうが大事だと思います。そして,そのひとつのポイントがどういう滑りの感覚を生み,どう先生に評価されたか?ということを覚えることです。そうすることによって,ある「要因」とそれによる「滑走感覚」と「結果」の対応がつきます。つまり「因果関係」でとらえることができるわけです。このように,「“A”を意識して滑ったら,“B”という感覚が得られ,“C”という評価を受けた…」という事例を増やしていくことが大事です。コレを「引出しの数を増やす」ということでお話させて頂きました。
  ご自分がそれまで「イイ滑走感覚」だと思っていた感覚でも,第三者が評価すると「あんまり良くない…」ということがあり得ます。特にワンパターンの滑りをしがちな人は,その感覚から抜け出る事ができないのです。ところが他人の評価で,「今のは良かったよ!」と言われたときの感覚は,それまで自分が思っていた感覚とは違う…ということが良くあります。自分の滑りを変え,幅ひろい滑りができるようにするには,それまでの感覚から脱却する必要があります。「引出しの数を増やす」ということはこういう意味でも大事なのです。
  そして,何よりも役に立つのは「スランプ」に陥った時にそれから抜け出せる…ということです。ああ意識すればこうなる,こうすればああなる…という因果関係の事例をたくさん作っておけば,その時々の状況にあった「引出し」を開くことが容易にできます。経験を単なるケイケンで終わらせるのでなく,「因果関係」として保存して置く…ということです。
  引出しの数の多さ…イメージや滑走フィーリングの多さ…がいろいろな技術を駆使した滑りをするための元になる,と思います。ですから,同時に多くのことを意識するのではなく,まずひとつの事に集中してみることです。
  今シーズンも,できるだけ引出しの数が多くなるように,いろいろな滑走イメージを試してみました。その中でのおおきな収穫は“エネルギーライン”でした。(^I^)


5/1 (水)  曇り
 
 今日から五月…。皐月,とも書くそうですが,一年のうちで一番過ごしやすい季節でもあります。

  
五月の鯉のぼりのように、腹の中はさっぱりとしていて、少しのわだかまりもない様子を 『 五月の鯉の吹流し…』と言うそうですが,その様な五月であってほしいと思います。(^I^)
       -------------☆★☆-----------
  さて,今日から五月ですので,この月は2002シーズンを振り返って,私が思ったこと感じた事をお話しようと思います。教師日記を見てみると,その行間にいろいろなことがあったことが思い出されます。シーズン中は日記を書くだけで精一杯で,その内容を詳しくお伝えすることができないこともありました。それらの事を思い出しながらシーズンを総括してみたいと思います。
  今年自分で掲げた目標のひとつは「小回り」でした。モチロン自分自身の小回りをもう少し極めたい…という希望もありましたが,生徒さんがどうやったら「小回り」を苦労せずに愉しむことができるか?ということでした。
  シーズンが終わってみてこの目標…70%くらいはクリアできた気がしています。小回りレッスンの方向が見えた!…という意味においてです。そのキーワードは「外向」と「クロスオーバー」でした。
  「外向」は以前から指摘されていた事ですが,カービングースキーが台頭してきて“正対”という言葉が独り歩きを始めてから,“外向”は必要の無いもの,悪役そのもの,の感がありました。でも「小回り」ではコレ無くしてターンが成立しません。整地緩斜面でのカービング小回り…は例外としての話です。
  もうひとつの要因は「クロスオーバー」でした。これまでも「斜めの直滑降」とか「フォールラインを二本想定して…」と言うような表現で言われて来ましたが,つまりは「重心の下をいかにスキーが通り過ぎるか?」ということがその核心だということです。スキーを中心にして重心が移動する感覚の交錯を「クロスオーバー」と言い,それに対して,重心を中心にしてスキーが身体の下を交錯して行く感覚のことを「クロッシング」と言う…というような話がありますが,その言い方で言えば「クロッシング」感覚です。良く「身体をフォールライン側に投げ出せ!」とか「内足主導でターンに入れ!」とか言われて来ましたが,これでは不安定要素が増えるだけです。その理由は,重心の移動がギクシャクしスムーズに行なわれないから…ということです。重心の下をスキーが通過する意識を前面に持って行った方が,雪面コンタクトも無理なく行うことができます。もちろん角付け量の違いによって,雪から返って来る圧力に違いはありますが,コントロールがしやすいのです。そして何よりイイ結果を生むのは,「地球の引力に身体が引かれて行く…」という意識が出ることです。落下運動が無理なく起こり,位置エネルギーを最大に生かしたターンが行える…ということです。
  
  今年のテーマのひとつ「小回り」に,ひとつの方向性が見出せた気がしている【TOK】です。(^I^)



     -------------☆★☆-----------