August
2001

八方尾根スキースクール教師【TOK】の個人的な日記です。興味のある人はどうぞご覧ください。(^I^)  
          
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 What is Today's Topic?

今日のテーマ

08/31 曲進系
08/30 内脚の本音
08/29 押す意識
08/28 サイドスリップ
08/27 押すと引く(2)
08/25 初心者へのカービング指導
08/24 押すと引く(1)
08/20 左右の圧バランス
08/19 スキーの前後差
08/18 ターンとは?
08/17 オレンジターン事始め

08/15 “感じる”利点
08/14 感じる強さ
08/13 感じる方向
08/12 感じる場所
08/10 因果関係
08/09 滑るイメージ
08/08 足裏で感じる
08/07 雪原散歩
08/06 板から感じる
08/04 感じて伝える
08/03 触感
08/02 雪からのメッセージ
08/01  “フィーリングスキー”

   ***
     これまでの日記  
           ***

教師日記 2001年7月

教師日記 2001年6月

教師日記 5月

教師日記 4月

教師日記 3月

教師日記 2月

教師日記 1月

教師日記 12月

教師日記 11月

教師日記 10月

教師日記 9月 #2

教師日記 9月 #1

教師日記 8月 #2

教師日記 8月 #1

教師日記 7月

教師日記 6月

教師日記 5月 

 

 

 

 

 

 

 


08/31 (金) 曇り
 今朝は,昨夜からの雨が上がりましたが,曇り空の白馬です。気温は18℃…屋外では「虫の音」が聞こえます。
 さて,昨日の私の辛口日記について,数人の方から E-mail 等でコメントを頂きました。ありがとうございました。(^I^) 
 私は特に,これからのスキー界の方向を見据え,スキー指導に携わったり,多くの人に“スキー”の楽しみを紹介していくべき立場に居る人たちについて,昨日のような考え方もある…ということを述べたかったのです。“スキー”に興味があり,自分達で技術論を闘わせて,互いに切磋琢磨をしようという人たちに異論を申し上げるつもりはありません。ですから,いろいろなホームページで,特徴ある技術特集を組んで,それについていろいろ話をするのは,議論のための議論にならなければ,大いに結構なことです。むしろ,このような議論ができるからこそ,「ホームページ」の存在する意味があり,それがスキー技術の理解につながる…ということになるのだと思います。
 私の申し上げたいのは,「一般スキーヤーに大きな影響を与える立場に居る人たち」に対してであります。(^I^)
     -------------☆★☆-----------
 ところで,昨日の日記の中に「曲進系」について触れましたが,それについてご質問がありましたので,私の知るところをお話したいと思います。
 1970年頃,「コブを滑る技術」として,当時SAJが「SAJスキー教程」の中で取り上げた技術です。技術体系として,「初歩動作」⇒「基礎滑降技術」⇒「基礎回転技術」とあり,それに続いて「回転技術の発展段階」⇒「総合応用」となっていました。「曲進系」という言葉は,「ジャンプ系」,「ステップ系」とともに「回転技術の発展段階」の中に位置していた技術です。この三つの分類の理由は「回転のキッカケをどのようにするか?」ということで分けたものです。
 「曲進系」の特徴は回転のキッカケとしての“屈膝平踏み先落とし”から,“抱え込み送り出し”という方法を使うものでした。簡単に言えば,ターンから次のターンに入る時,先ず膝を曲げ,腰を落としてスキーをフラットに踏み,クロスオーバーをさせながら次の外スキーをターン外側に伸ばす…というものです。コブがあろうが無かろうが,雪からの抵抗が来ようが来まいが,とにかく舵取り期が終わったらヒザと腰を屈折させてニュートラル状態を作り,スキーのトップを次のターン方向に向けながら外脚を伸ばしながら外側にずらして滑る…。平踏みにするときに,腰をスキーに近づけますが,そのとき一瞬抜重状態になるので,それをキッカケにする…ということでした。つまり,ターンするためのキッカケ操作としてとしての意味合いと,その後の脚の伸縮を大ききく使えるということを利用しての「コブ」や「深雪」にも対応できるという意味合いの二つの側面を持っていました。
 これがSAJから発表された後,日本のゲレンデはどこへ行っても「かかとにお尻がつくくらい低くなったり,脚をビーンと伸ばしたり…」というスキーヤーで溢れたのでした。この技術そのものに大きな誤りは無かったと思いますが,その練習方法や,局部的な取り上げ方に問題がありました。多くの指導する側の人たちが,先鋭的な技術ということで,形だけを真似てその本質を見誤ったのです。
 コブや深雪での効果はあったものの,スピードコントロールや身体の使い方に問題がある…として1973年に教程そのものも「日本スキー教程」と名称が変わり,「曲進系」も「ピボット・ターン」と名を変え,その運動も自然な動きになったのでした。
 技術のとらえ方をある一方からだけ見てしまうと,このような“行き過ぎ現象”が良く起こります。こういうとき,私達は「何のためにスキーをしているんだろう?」という問いをみずからにしてみることが大事だと思います。(^I^)

 さて,明日から9月です。新シーズンの始まりです。
 “On Line Ski School”では新たな教師を迎え,充実した内容にしていきたいと思っています。とりあえず明日9月1日から,これまで教師日記で書いてきました“フィーリングスキー”を,別のページに別けたいと思います。どうぞご期待ください! (^I^)


08/30 (木) 曇り
 今朝は曇り空の白馬です…。これから晴天に向かうのでしょうか…それとも雨に…。
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 昨日,宮下○樹君が友人の結婚式列席とインライン大会ジャッジをするため,白馬に帰って来ていて,夜,私の店に来てくれました。そこで早速,”On Line Ski 教室”の掲示板でいろいろ話題の「ターン始動は外脚か?内脚か?」について本音トークを聞いてみました。
 要点は二つでした。「自分の滑走時の意識と,その滑りを評価する人の見方,との間には違いがあることもある…」,「自分の意識としては,内脚主導を意識して滑ることはほとんど無い…」ということでした。
 その席には他のスキー教師も居たのですが,「ターンのどの場所のことを論じているか?土俵が違うのではないか?」とか「実際に私たちスキーヤーが滑走する条件とは大きくかけ離れた,鏡のように磨かれたバーンで,極端な演技をして見せる時の技術で,一部マニアックスキーヤーの机上の議論だよ…」,「たまたまバランスを崩して内倒したときの滑りを,もっともらしくこじつけたんじゃないの?…」という声がありました。また,「SAJの教育本部としては“安心・誠意・感動”というスローガンを掲げ,一般スキーヤーが何を求めているか?を真剣に考えるべきだ…という趣旨の活動を展開しているときに,内脚がどうの外脚がこうの…といったような,ホンのわずかな人にしかわからないことを論じ,“スキー”を難しくしているその方面の人が居るのは,信じられない!」という声もありました。「こういう枝葉末節的な議論を,スキーのメイン技術の議論のように仕向けていく風潮はおかしいのではないか?そういうことをテーマにすることで,利益が転がり込む人達が,故意にやっている…利益誘導ということも考えられるなぁー…」という声さえ…。
 “スキー”を語る上で,技術論を闘わせることは必要なことですし,楽しいことでもあります。しかし,もしその議論がスキーの楽しみの本質を捻じ曲げ,スキーヤーに嫌悪感を与えたり,安全性などの面で問題を投げかけるようであれば,それは止めるべきでしょう。私が最も心配するのは,こういった先鋭的な技術をとらえて,「コレで滑れなければうまいといえない…」とか,「ナァンダァー…彼にはコレが解っていないのか…」的な風潮がスキーヤーの中に蔓延していくことです。昔,「曲進系」という技術が発表されたときに,まさに同じ様な懸念が実際のものとなった経緯があるのです。スキーヤーに多くの影響を与える立場に居る人は,常にこのことに留意しなければなりません。体操競技の「ウルトラD難度」をみんなに見せびらかし,これができなければ体操を止めなさい…というようなことが,もしスキー界でまかり通るようになったら,“スキー”は市民権を失ってしまいます。
 宮下君とすれば,多くのスキーヤーに,自分の本音を語りたい気持ちは強いものがあるようですが,彼の立場もあり,上記のような言葉がギリギリのコメントでした。
 私たちも,彼の真意を読み取って,本筋を見誤らないようにしたいものだと思います。

 …ということで今日の“フィーリングスキー”レッスンは オ・ヤ・ス・ミ でした…(=_=;)。


08/29 (水) 曇り
 今朝は山の頂きには雲が…。でも雲の切れ間からは日が射して気持ちのイイ朝です!。ヒンヤリとした初秋の香りがする白馬です。(^I^)
      -------------☆★フィーリングスキー★☆-----------No.0022----
 さて,前回までのレッスンで,直滑降からプルーク,そして簡単なプルークボーゲンまで練習してきました。今日からは,さらにプルークボーゲンの質を高め,より深くそしてスピードもより出せるようにしたいと思います。
 先ず今回は“押す意識”のイメージアップを目指します。
 右の図は足裏に意識したオレンジのつぶれ具合を,イメージとして表したものです。赤いは足裏で意識する方のオレンジを示し,青いは意識しない方のオレンジを表しています。オレンジを踏み込み,つぶすフィーリングは押す(Push)”という意識でご覧ください。
 1〜2はプルークの直滑降部分です。ここでは両足のオレンジを意識します。3で右足の赤い部分が少
し大きくなっています。これはここから左ターンをしようとするところで,右足のオレンジを少し強く踏む意識を持つことを表しています。4〜5とじょじょに右のオレンジをつぶしていきます。6では右足のオレンジのつぶれ具合を少し戻してやり,次のターンに備えます。
 7のところは両足のオレンジのつぶれ方が同じくらいになるように意識します。丁度足裏の感覚としては1〜2の部分と同じ感覚です。ここでは両スキーの雪面コンタクトの力が同じになりますからターンは一時止むことになります。この局面を「ターンのニュートラル」といいます。
 8では,これまでの右足から,左足に意識を切り替えてオレンジをつぶすようにします。すると今度は左スキーの雪面コンタクト圧が強くなりますからスキーは右にターンを始めます。ここから先14までは,先ほどの左ターンとまるっきり逆のパターンとなります。
 15は先ほどと同じ「ニュートラル」部分です。ここのところで,これ以降右のオレンジを押しつぶさなければ,スキーはターンを止めて,斜面を斜めに進もうとします。もし,もう一度左のオレンジを踏むようにすれば,スキーはまた右方向に回って行こうとします。
 つまり,オレンジを左右いろいろと踏み込み,その力をいろいろ調節してやれば,スキーヤーは自由に行き先を替えられる…ということになります。自動車で言えば「ハンドル」を切るのは「オレンジの踏み方」だ…ということです。
 今日のこの練習では,図のように「足裏でオレンジを積極的にふみつぶす!」ということに集中します。そしてそのつぶれ具合が,スキーが方向を替えて行くこととどのように関係しているか?を感覚として身に付けることです。スキーがターンをし,シュプールができますが,その「シュプールは,オレンジがつぶれて果汁がにじみ出した跡」…というイメージが湧けばシメタものです。

08/28 (火) 晴れ
 今朝は山には雲が掛かっていますが,里は太陽の日が射して気持ちのイイ朝です。あの夏最盛期の暑さは感じられなくなり,ススキも咲いてすっかり秋がすぐそこに来ているのを感じます。皆さんの所はどうですか?
      -------------☆★フィーリングスキー★☆-----------No.0021----
 前回までは「プルーク」状態で,左右のコンタクト圧変化をどのような意識で行なったらうまく変えることができ,ターンに結びつけられるか?についてお話してきました。
 今日は,それでは「直滑降」から「プルーク」状態にするにはどうするか?…についてお話します。実は初心者にとっては,プルーク状態で真直ぐ滑り続けることと同じくらい,このことも大きな難関のひとつなのです。
 このやり方にも【Do】てきなものと【Let】的なものがあります。
 「【Do】的なもの」…とは,上の図のレッドラインのように「スキー板」そのものを自分の力で横方向へ押しやる意識のものです。横に押すだけだから簡単!…と思われるでしょうが,コレがなかなかできません。直滑降状態ではスキーの真上に体があるので,その分横方向への成分を生み出すのが難しいのです。左右の板を均等になるように,注意深く足を広げてやらないと,片方だけの開き出しになってしまいます。また最近のようにカービングスキーでこれを行なおうとすると,ネジレ剛性が強いために雪面をズラスことが尚一層難しいのです。そのため,直滑降で滑り出したら,重心を一度下げておいて,「ヨイショ!」の掛け声と共にジャンプするような意識で,両スキーを一気に開きださせたりしますが,前に滑っている状態でこれを行なうのは大変なことです。ある程度運動能力があったり,バランス感覚に優れている人は難なくできますが,そのコツがつかめない人は大変な作業になってしまいます。
 さて,「【Let】的なもの」とはどういう意識のものでしょうか?直滑降で滑り始めたら,下の図のように足裏にオレンジを意識します。オレンジを意識する場所は土踏まず付近で結構です。そしてそのオレンジを図のようにコロコロと転がすイメージを持ってみます。スキー板を押す意識でなく,足裏のオレンジに意識を持たせるのです。土踏まずに意識したオレンジがゆっくり転がって,くすぐられるような感触が感じられたら,その時スキー板は少しづつ横の方に出ているはずです。オレンジがレッドラインのように回転するにつれて,グリーンラインのように足が外側に出て行きます。
 スキー板は土踏まずから先のトップの長さと,後ろのテールの長さが違っていて,トップの方が長いので,その分トップは横方向に移動する量が少なく,結果として直滑降からプルーク状態にすることができるのです。
 この“オレンジが転がるイメージ”は「カタツムリが触覚を伸ばして障害物を感知しようとする仕草」と意識的に似た部分があります。オレンジが転がるイメージを持つことによって,それがどれくらい転がっているか?という情報を足裏から重心方向に伝え返している…ということなのです。カタツムリが触覚を伸ばすのは力を加えるためではありません。モノを感知するためです。オレンジの回転状態を認識しようとするする仕草も,“感知しようとする意識”のひとつなのです。結果的に脚は伸びていきますが,これは「“押す”という意識」より,「“探る”という意識」の結果表れる運動だといえます。この感覚を私は「【Let】的感覚」と呼び【Do】的感覚と別けて考えています。
 上達したスキーヤーが回転しながら滑って行くとき,クロスオーバーを経て,次の外スキーが雪面を捕らえる局面で脚が伸びる動作が見られますが,この時の脚の伸びは“押す”という意識より“探る”という意識の結果表れる運動だ,と私は考えています。うまい人のスキーイングでは,この局面で「重心の高さが変わらない」…ということがそれを証明していると思います。
 「直滑降」から「プルーク」状態に…現象的に見れば「サイドスリップ」のさせ方…ですが,初心者の練習するこの運動の中にも“スキーを楽しむ大きな秘密”が隠されている。…そう思うと本当に“スキー”って面白いですネ! (^I^)

08/27 (月) 曇り
 今朝は曇り空の白馬です。皆さんは8月最後の週末をいかがお過ごしでしたでしょうか?(^I^)
      -------------☆★フィーリングスキー★☆-----------No.0020----
 さて,8/24の“フィーリングスキー”0018 で「押すと引く」についてお話しましたが,今日はこの時の足裏感覚についてもう少し付け加えたいと思います。
 「押す」あるいは「引く」という感覚は具体的には,足裏に意識したオレンジが「どういう風な状態になるか?」ということをイメージアップすることで行なうと効果があります。
 左のアニメーションは“押す(Push)”という意識の,また右のアニメーションは“引く(Pull)”という意識のものです。画像をクリックするとアニメーションが見れます。
 “押す”という意識は,重心方向からの力が赤い色のオレンジを少しづつ,つぶしていくイメージです。どちらかというとダイレクトに雪面に自分の力を加えていく…という意識です。自分みずからの力でターン方向を決めていく気持ちが強い滑りになります。
 一方“引く”という意識は,初めに少しつぶれていたオレンジが元の形に戻っていくイメージです。引くことによって反対側のスキーの圧力が増し,結果的にターンが始まる…という意識です。スキーの性能が生きてターンが自然発生的に始まるという感覚が強い滑りになります。
 どちらの意識でもターンは開始しますが,スキーヤーとしての内面的な心の違い方は両極端です。どちらかというと運動能力の高い初心者は「押す感覚」の方が適しているようです。体力の無い人や,エッジコントロールがうまくできない人は,「引く感覚」がうまくターンを誘導できます。
 この段階の初心者にはどちらの滑りも経験してもらうことがいいでしょう。特に運動能力の高い人は,「“引く”なんていらないよ!“押し”さえすりゃスキーは回るよ!」という人も居ますが,将来的なことを考えるならば,どちらの意識も持った方が良いと思います。“押す”では重心の位置が変化しますが,“引く”ではほとんど変化しません。この「重心の位置が動くか動かないか?」が後で大きな意味を持つことになるのです。
 【Doスキー】をメインに練習してきたスキーヤーも,機会をとらえて【Letスキー】の大きな柱となるこの“引く”意識の練習をされることをお勧めします。


08/26 (日) 曇り
 今朝は兎平から上は雲の中…。少々蒸し暑い白馬です。
 さて,急遽山のガイドをお願いされ,これから出かけなくてはならなくなりました…。
 おいで頂いた方々には申し訳ありません…。(=_=;)

08/25 (土) 晴れ
 今朝は夏の名残を感じるような空です…。でも朝夕はめっきり秋らしくなりました。
 白馬は夏休み最後の休暇を過ごす人でけっこう人が入っています。皆さんはいかがお過ごしですか?(^I^)
      -------------☆★フィーリングスキー★☆-----------No.0019----
 さて,このシリーズ“フィーリングスキー”を書き始めてから E-mail で,「初心者にいきなりカービングスキーを教えることは無理か?」というご質問を頂きました。そこで,今日は少しテーマからそれますが「番外編」ということで,このことについてお話したいと思います。
 初心者の方にいきなり「カービングターン」…,無理なことだとは思いません。多分できると思います。ですが,私ならやりません。その理由は「リスクが大きすぎる」からです。
 これまでいろんな場面で,何度かお話してきていますが「カービングターン」は“カービング(Carving)”=(石などを)刻む,彫刻する…という意味がその言語で,“細く切る”というニュアンスがあります。ですから“スキー”でいうところの“ズレのスキー”ではなく“切れるスキー”がその本意です。しかし,いくらスキー板の性能が良くなって来ているとはいえ,滑る初めから滑り終わるまでズレを全く伴わない“スキー”ができるとは考えられません。確かに従来のスキーに比べればサイドスリップの要素は格段と少なくなり,角付けを内側にすることだけで,スキーはその方向を変えては行きます。しかし,実際のターンでスピードコントロールをしたり,停止したりしようとするとどうしてもスキーを横方向にズラす局面が出てきます。私の実感では,エクストリームタイプやギンギンのレースタイプで無い限り,いくらカービングスキーを使っていても,スキー滑走の50%以上はズレを伴っていると思います。「スキーをズラす…」ということがスピードコントロールにつながり,安全なスキーを楽しむことにつながっているのです。このような現状の中で初めから「カービングターン」だけを指導していくことは,無謀としか思えません。 過去に,スキーのトップの長さがテールの長さより短く,まさにカービング特性のみでターンできるスキーが発売されましたが,それが主流にならない…という現状は,従来型のスキーの形状=トップがテールより長い…という最大の特徴を生かすべきだ,ということの大事さを物語っている…と言っていいと思います。
 実は昨日,ある人と「カービングスキー」の話になり,「カービングスキーはスキーの滑り方をひとつの型にはめてしまった気がする…。アレもできるし,コレもできる…というスキーの持ついろいろな楽しみ方の幅を狭くしてしまったのではないか?なんでもかんでもカービング…では斜面も限定されるし,疲れも多い…」というような話をしたところでした。実際,カービングタイプのスキーでコブを滑るのは難しいですよね!。「ヒョットすると,また元の長い板が脚光を浴びる日が来るかも知れないね?!」…と話を結んだのでした。
 そういうわけで,「初心者にいきなりカービングスキーを教えることは無謀…」というのが私の本日の結論です。(^I^)

08/24 (金) 曇り
 今日は曇り空の白馬です。朝夕は本当に涼しくなりました…。
 三日間 オ・ヤ・ス・ミ をいただき,関東方面に行ってまいりました。台風の真っ只中でしたが,懐かしい人たちに合えて有意義な休暇でした! みなさんもお元気でしたか?
      -------------☆★フィーリングスキー★☆-----------No.0018----
 さて,今日は「圧バランスを変える」の二回目で“オレンジを押すと引く”…がテーマです。
 前回お話ししたように,左右の圧バランス(雪と足裏の雪面コンタクト量)を変えるには【Do】的なものと【Let】的なものがあります。これは非常に似ている事のようで,実は大きな違いがあります。この感覚を磨くために以前,8/17のところでお話した「オレンジ」を足裏に意識してみます。黄色の円のように,両足の裏の土踏まずにそれぞれ一個づつオレンジを想像するのです。
 さて,上の図「Push」はこのオレンジをレッドラインのように,ヒザの方向から足裏の方向に力を加えて押しつぶす意識です。上体をかぶせ,腰やヒザを折るようにして低い姿勢になりながら押すのが普通です。中には脚を突っ張るようにしてオレンジを押すようにする人も居ます。こうすることで右足に掛かる圧が増しますから,スキーは左方向に回り始めます。右足のかかとを外に出すようにする必要はありません。これが【Do】的な感覚です。
 さて,今度は下の図「Pull」のように左足に意識しているオレンジを,グリーンラインのように,腰の方向に引き上げる意識で行なってみます。最初は両足に均等に乗っかっていますから,オレンジは約半分くらい足裏でつぶれている感覚があります。このオレンジを,足を引き上げる意識で圧を弱め,まん丸のオレンジに戻すようにしてみるのです。こうすると,左足のコンタクトが右足より少なくなり,結果的に右足の圧力が強くなって,スキーは左方向に回り始めます。これが【Let】的な感覚です。
 【Do】でも【Let】でも,結果的にスキーは回転を始めますが,その中身は大きく違うことだけを,先ず頭に入れておいてください。私の経験では初心者にプルークボーゲンをお教えする場合に,【Let】感覚の方が【Do】感覚に比べて約7割の方がよりすんなりできるように思います。
 ところで,この方法を試された方から「左を引き上げて、軽くしてはいるが、結果的に右が強くなるのだから、圧を加えるのと同じではないですか?」という質問を受けることがあります。でも実はまったく異なるのです。圧を加える方法では、加えようとする時に必ず荷重点と重心の距離=レッドラインが「短くなるか,長くなるくか…」します。つまり,脚が「縮むか伸びるか…」するのです。一方引いて軽くする方法では,右足の圧は強まっても右脚の「荷重点と重心の距離、長さは変わらない」のです。重心の高さが変動しませんから,上体の形も変わることは無く,目線も同じ位置にあり,周囲の状況判断を的確にするうえでも優れている,といえます。
 【Do】とか【Let】とかいうことは,ある程度スキーに習熟してきたときに大事になりますが,先ずここのところでは,足裏に意識したオレンジが「よりつぶれたり」,「元に戻ったり」…ということを大事にすべきです。足裏でオレンジを介して,雪を感じること…。これが第一です。オレンジの形が左右の足裏で自由に変化し,それがスキーの方向を変えるとことに結びついている…ということを楽しんでください。(^I^)


08/20 (月) 曇り
 今日は雲が掛かっています。久しぶりの太陽が顔を隠しています。台風…被害が少なく通り過ぎてくれるといいのですが…。皆さんもお気を付けて…。
 さて,明日から23日まで,【TOK】の夏休みです。毎日おいでいただいている方には申し訳ありませんが,三日間の オ・ヤ・ス・ミ となりますのでご了承ください…(=_=;)。
      -------------☆★フィーリングスキー★☆-----------No.0017----
 今日は「ターンする」の三回目で“左右の圧バランスを変える”…がテーマです。
 前回お話ししたように,土踏まず近くを体を支えるポイントとして,一本のスキーの前後差を利用すれば,スキーには回転しようとする力が生まれます。このとき大事なのは「自分でスキーを操作しなくても…」ということです。初心者の方がプルークボーゲンをしようとするとき,ほとんどの人はスキーを「みずからの力でズラす」意識で行なう人が多いのですが,ここではあえて「雪の力で」ということにしておきます。それは後で大事になる「Do感覚」と「Let感覚」の違いを,できるだけ早い時期に感じ取って欲しいからです。
 さて,スキーをV字形に開いて,斜面を下りていくと,図のように右スキーは左方向に,左スキーは右方向に向きを変えようとします。もし,左右両足におなじように乗っていると,体重が左右に分散されて,およそ1/2の体重がそれぞれに掛かることになります。つまり,同じだけの圧力が左右均等に掛かりますから,「左に回ろうとする力」と「右に回ろうとする力」は同じ強さになって,向きを変えようとする力は,左右互いに打ち消され,真直ぐ進むことになります。これがV字形のまま真直ぐ滑り降りるという「プルークファーレン」という状態です。
 じゃ方向を変え,ターンするにはどうしたらいいか?というと,「左右の足にかかる体重の重さを違えてやれば良い…」ということになります。つまり,左右の足裏の荷重バランスを変え,雪面コンタクトの強さを変えれば,スキーヤーはその方向を変えることができる,ということです。例えば,体と雪のコンタクトの力(圧)が全体で100だとします。もし右足に70掛かり,左足に30掛かるとすれば,70−30=40分の差が出,右足の圧が40だけ多くなります。その分だけ右足のスキーが強く雪の抵抗を受けることになりますから,全体としてスキーヤーの体は左に回り始めるのです。
 そこで大事なのが,この圧バランスをどう崩すか?ということです。
 普通はみずから圧を加えることで、この荷重バランスを崩してやります。脚を曲げて荷重したり、脚を下の方に伸ばして圧を加えたりするわけです。例えば右にターンしようとしたら、左の土踏まず辺りにより多く荷重します。すると、左の方の圧が右の圧より大きくなりますから、左のスキーが右へ回ろうとする回転力が右スキーの左に回ろうとする力より大きくなり、結果としてじょじょにスキーは右にターンするのです。この操作は雪に自らの力や体重を掛ける動作なので、私はこれを【Do】(ドゥー)と呼んでいます。
 
左右の荷重バランスを崩すのに、もうひとつのやり方があります。それは,圧を加える意識ではなく、ターンしようとする側の圧を軽くする方法です。例えば、右にターンしようとする時は、プルークのまま斜面下方に滑って行き、右の脚を上体方向に引き上げるようにして、少しずつ右の圧を弱めて行くのです。すると結果的に左スキーの圧が右のそれより強くなりますから、スキーは右方向に向きを変えて行きます。これを【Let】(レット)と呼んでいます。
 次回は,この【Do】と【Let】をどのようにしたら感じ取れ,使い分けられるか?ということについてお話することにします。


08/19 (日) 曇り
 今日は少し雲が掛かっていて,長袖が欲しくなるような気温です。確実に秋がそこまで来ているのが肌で判ります。(^I^)
 一昨日,昨夜と連続で,このホームページをご覧になっている“S”さんが私の店に来てくれました。初対面なのですがどことなく,ホームページを見られている方かな?と思っていたのですが…。そんなにお話はできませんでしたが,本当に良く来て頂きました!ありがとうございます。(^I^) こういうことからスキー仲間が増えると本当に楽しいと思います。
      -------------☆★フィーリングスキー★☆-----------No.0016----
 さて,今日は「ターンする」の二回目。
 スキーの進行方向を変え,行きたいところに進むためには,昨日話したようにいろいろなやり方があります。ここでは“フィーリングスキー”ということがメインテーマなので,スキーの形状と雪の力を利用して方向を変える方法の中の,“スキーの前後差を利用する”ことでターンをしてみたいと思います。
 少々理屈っぽくなりますが,ある程度「どうしてそうなのか?」ということを頭の中で理解できていないと,「ナルホド…じゃあやってみるか!」という気持ちになりにくいので,少しだけ我慢してください。(^I^)
 
スキーをほんのわずか「V字形」に開いて,真直ぐ滑り降りたときのことを考えてみます。スキーが少し開いていますから,雪面とスキーが接する場所はスキーの内側部分,ブルーの線の所になります。この状態で進行方向に進んでいくと,スキー全体としては,このブルーラインのところに雪からの力を受けます。もし,足裏の「土踏まず」付近を踏んでいれば,スキーのトップではレッドラインの部分で雪からの力を受け,テール側ではグリーンラインで雪の力を受けます。
 スキーの形は見て判るように,土踏まずから先端までの長さ「L」の方が,土踏まずからテールまでの長さ「l」より長くなっています。この状態でスキーが進行方向へ移動すれば,L>l ということなので,トップ部がテール部より大きな雪の力を受けます。大きな力を受けたトップの方は,テールに比べ進行方向に進む力が抑えられますから,そこに留まろうとする作用が働きます。つまり足裏の荷重点(支点)を中心として,テールは外側に出て行こうとし,トップは内側に入り込もうとする力が働きます。矢印のような,スキーの向きを変えようとする力=回転モーメント,が生まれるのです。
 このように,一本のスキー板のことを考えてみると,支点から前後それぞれの距離が違うこと,そして雪の力を貰うこと…,これがスキーの方向を変える原動力になる…ということが,理解いただけると思います。
 次回は,二本の板がターンにどのような関わりを持っているか?についてお話したいと思います。

08/18 (土) 快晴
 今日も快晴! ただ少しだけ山の中腹に雲が掛かっていますが…。気温は19度で朝は少し肌寒い感じがします。みなさんの所…残暑はいかがザンショ…(^I^)
      -------------☆★フィーリングスキー★☆-----------No.0015----
 さて,今日からはいよいよ「方向を変える」ということを“フィーリングスキー”的に考えてみたいと思います。今日はその第一日目で“ターンとは?”ということから…。
 ターン=“turn”は「回転させる」,「方向を変える」という意味ですが,その語源はギリシャ語のtornos(円を描く道具)だそうです。つまり“スキー”でいうところの“ターン”も「丸い曲線で円を描くように方向を変える」ということになります。イナズマ型のようにカキッ,カキッと方向を変えるニュアンスはあんまり無さそうです。
 “方向を変える”必要性は,どこにあるか?というと,他人や何か他のものにぶつからないようにするためだったり,スピードを落として安全に滑るためだったり,あるいはターンそのものの快感を求めるためだったり…ということになります。滑る快感やスピード感を求めるなら“直滑降”の方が速く滑れますから優れています。でも,どこでも,いつでも真直ぐ滑り降りる…ということだけを求めるわけにはいきません。そこで「自分の行き先をコントロールすること」が大切になり,そのための“技術”が必要になります。
 “直滑降”から,どのようにしたら“ターンする”ことができるようになるか?というと,それには大きく別けて次のつの方法が考えられます。
  ※スキーを自分の力で操作する
    1.スキーを空中に持ち上げ,自分の力でプロペラのように回す。
    2.スキーのテールを体の外側に押し出してスキーの向きを変える。
  ※スキーの形状と雪の力を利用して方向を変える。
    3.スキーの形状のうち「前後の長さの違い」を利用する。
    4.スキーの形状のうち「サイドカーブ」を利用する。
 いずれの方法でも“スキー”を楽しむことはできますが,それぞれに特徴があります。
 「1」は,最も手っ取り早い方法ですが,なにせ疲れます。また一気にその方向が変わりますのでスピードがあんまり出せません。大きいターンより小さいターンをするのに適しています。
 「2」は,以前盛んにやられた時期がありました。まだスキーの性能が良くなかった頃の話です。これもあんまり有効に雪の力を利用しませんので疲れます。また,スキーを横に振り出すので高速では危険です。低速でゆっくり整地された斜面を降りるときには安心して滑れる方法です。今でもスピードが出過ぎたときなどチョッチョッと使うことがあります。
 「3」は,スキーの設計された意図を素直に使う…という意味で,最も一般的な滑り方です。スキー板の最大の特徴といっていい「トップがテールより長い」という特性を生かした滑りになります。ズレの要素を伴った滑り方ということもできます。雪の力とスキー板とのマッチングが重要になりますが,その組み合わせ如何ではいろんな斜面上を低速から高速まで,幅広い滑り方ができます。
 「4」は,最近のスキー板の高性能化によって可能になった滑りで,スキーのサイドカーブを利用した滑りと言っていいでしょう。切れの要素を追求したカービングターンと言われ,レースやエキスパートスキーヤーが高速で滑走するのに最も適しています。また,エッジングと斜面移動を覚えれば手軽に方向を変えることができるので,最近注目されていますが,スピードコントロール,という意味で「3」の滑りがある程度できるようになってから挑戦したほうがいいと思います。
 モチロン,これらの滑りがそれぞれ独立して使われることはほとんどありません。実際のターンでは,それぞれが少しづつ組み合わされて,複合的な技術で「方向を変える」ことが行なわれているのが実情です。逆に,ある特定の技術だけでターンしようとすることは,スキーの楽しみの幅を狭くすることになるでしょう。
 “フィーリングスキー”では「3.スキーの形状のうち“前後の長さの違い”を利用する」…ことから始めたいと思います。(^I^)

08/17 (金) 快晴
 今朝は本当に昨日をさらに上回る快晴で,スキッ!とした感じの白馬です。
 昨日はトレッキングガイドで大雪渓に行って来ましたが,もうススキが咲き始め,トンボが舞い,キノコが目を出し…と「秋」の気配一杯でした。季節は確実に秋…そして「冬」に向けて走り始めていることを感じました。
 冬が間近になって慌てないよう,いまから身体の調子やイメージを少しづつ「冬モード」につくりあげて行こうと思います。
 さて,「教師日記」の8月分ですが,容量が大分大きくなってしまいましたので,前半と後半を別けることにしました。少し見づらいかも知れませんがご勘弁ください。(^I^)
      -------------☆★フィーリングスキー★☆-----------No.0014----
 さて,前回まで,「雪原散歩」,「直滑降」,「プルークファーレン」を通じて,「雪からの情報を感じる」…ということについてお話してきました。そして,感じようとするにも,ただ漠然と感じるのではなく,感じる「場所」,「方向」,「量」を意識することが,身体の自然な反応を引き出すこともお話ししました。
 しかし,そうは言っても,足裏に意識を集中させ感じ取ることはなかなか容易ではありません。そこで思いついたのが“オレンジターン”でした。「スキーQ&A」の【TOK】流スキー術にもそのあらましを書いていますが,「感じ取る」ということを,足裏に「オレンジ」を意識することで,よりイメージしやすくしよう…というものです。足裏に意識するのは何もオレンジでなければならない理由はありませんが,私はオレンジを使っています。雪面コンタクトをしっかりさせ,バランス維持やスキー操作の上でも想像以上の効果がありますので,再確認の意味で,お話しして行きたいと思います。
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 「プルークファーレン」で「感じる“場所”,“方向”,“量”を意識する」ことについて触れました。じつはこの練習でも「オレンジ」を足裏にイメ-ジすると感覚が早く飲み込めます。
 右の図のように,足裏と雪の間に「黄色いオレンジ」がある…というイメージを持ちます。実際に在るわけではありませんが,「A」や「B」「C」のようにイメージするのです。すると体重がその部位に掛かりますから少しだけつぶれる感じがつかめます。そのときどれくらいつぶれているか?がイメージできれば,それは「感じる強さ」=コンタクトの強さ,を感じ別けている…ということになります。また,青線の矢印の方向から雪の力を受ければ,オレンジは前後に押しつぶされ,平べったくなるイメージが湧きます。これは「感じる方向」=除雪抵抗の来る方向,が意識できたことになります。さらに,このオレンジがどこに置かれているかな?ということを感じれば,それは「感じる場所」=荷重点(支点)を感じ別けている…ということです。
 このように「オレンジ」をひとつ足裏に意識することで,漠然と感じるというよりもさらに鮮明にコンタクト状態を把握できるようになります。足裏に意識したオレンジがいろんな形に変化しながらつぶれている様をイメ-ジする事で,足裏感度を高めることができるのです。
 次回からは,このオレンジをイメージすることで「プルークボーゲン」を楽しみたいと思います。
 乞うご期待! (^I^)





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