Chapter 14    “お習字ターン”

Chapter 14
Contents  ☆★☆


0059
穂首のどこで書く?
0058
穂首の形
0057
∞ターン
0056
積極性を産む


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Chapter12
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Chapter13

“フィーリングスキー”
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-----☆★【TOK】の Feelin' Ski ★☆----- 0059 “お習字ターン”#12 穂首のどこで書く? ----

  今回は“お習字ターンイメージ”の最終回で,その十二回目。今回は“穂首のどこで書くか?”がテーマです。
  筆の毛先のことを“穂首”と言いますが,その“穂首”もその部位によって右上のような呼び方があります。これだけ多くの呼び方があるということは,習字では,文字の勢いや太さ加減などの変化をつけるとき,その部位を微妙に使い分ける...ということを物語っています。文字を書くときの繊細さが伺えます。さて,“スキー”でも前回説明したように,“穂首”の形状や長さのイメージを変えるだけでその滑りが違ってくるのですが,“穂首”のどの部分を使って書くか?ということでも,その滑りに違いが出て来ます。習字と同じように,“スキー”でも滑りの繊細さを出そうとすれば,“穂首”のどこで書くイメージを持つか?ということが大事になるのです。
  毛の先に近い方,“命毛”付近で書こうとすると,角付けを極力使わない滑り...抵抗の求め方の少ない,軽いタッチの滑りになります。また“腹”付近で書こうとイメージすると,ある程度角を使い,強い圧を求めるような滑りになります。不思議なもので,単に「“穂首”のどの部分を使って書くか?」ということをイメージしただけで,身体が自然にそのように反応し,それぞれ違った滑り方になってしまうのです。これは誠に不思議なことですが,実際にこうなってしまうのです...。自分のイメージに反応して最適な身体の使い方をもたらしてくれる「人間の身体の素晴らしさ」を感じます。  
  さて,さらに大事なことは,穂首の“腰”は使わないようにする...ということです。右の二枚の写真の内,左の方は「“腰”を使っている筆」です。右の方は「“のど”〜“腹”付近を使っている筆」です。“のど”〜“腹”を使って書いているときには,写真のように“穂首”に弾力がありしなやかさが残っています。ところが,“腰”を使っている方は,弾力が無くこれ以上深く曲がることはありません。実はこのように“腰”を使うイメージを持ってしまうと,その場所が“支点”になり,“スキー”のコントロールがうまくいかなくなってまうのです。「教師日記8/2」の“穂先の位置”でお話した様に,“穂首”の先端は“センサーポイントSP”にイメージします。そして,そことは違った,かかとの内側に“支点FP(Fulcrum Point)”をイメージします。この「てこの支点」位置...“FP”があるからこそ“センサーポイントSP”で雪の圧を感じ分けて行くことができるのです。ところが,“腰”を使って書くイメージを持ってしまうと,身体を支える支点の位置が「かかと内側」から「スキーのトップ方向」に移ってしまい,もはや“センサーポイントSP”で感じるどころではなくなってしまうのです。テールの安定性が無くなり,まさに「ダッチロール現象」(脚注)が起こって,フラフラしたターンになってしまいます。この様な不安定なスキーイングを行わないためにも,“穂首”の使用範囲は“命毛”から“腹”の範囲内に限定する意識が必要になります。
  実際に“習字”を書くとき,筆以外の所,例えば手首とかひじとかを固定し,そこは動かさないようにして筆を動かすようにするとうまく字が書けます。つまり,支点をどこかにイメージするからこそ筆が活き活きと動いて,迫力ある字が書けるのです。“スキー”でもこれと同じことが言える訳です。“スキー”の場合はその位置がかかとの“支点FP”ということになります。
  今回,最終回は“穂首のどこで書くか?”についてお話いたしました。
          **********
 (脚注)ダッチロール現象: 「1985/08/12,日航ジャンボ機,御巣鷹山に墜落」 の原因となった現象。このリンク先に簡単な解説が載っています。




-----☆★【TOK】の Feelin' Ski ★☆----- 0058 “お習字ターン”#11 穂首の形 ----


  “お習字ターンイメージ”の十一回目。今回は“穂首の形や長さの違いをイメージして滑る”がテーマです。
 これまで,舵取りの部分の“書く要領”とか,角付けの切り替え時の“払うゥー”と“書くゥー”についていろいろみてきました。今回はその筆の「先っぽの形状」...つまり“穂首の形”をいろいろ変えてイメージしたらどうなるか?を探りたいと思います。
  さて,習字用の穂首...そんな違いは無いでしょう?とお思いの方も多いと思いますが,それが...右の写真のようにイロイロあるのです。普通は徐々に先端が細くなっている筆をイメージしますが,とんでもありません。書く文字のタイプによるのでしょう,ご覧のようにそれこそたくさんの種類があるのです。実際のレッスンではこの中の何タイプかをイメージしてもらって,滑ってみるのですが,皆さんびっくりするくらい,ご自分の滑走感覚に違いが出ることを実感されます。その感覚は各々微妙に違うのですが,それが運動の違いとして滑り方に現われてきます。
  ところで,「“穂首”の長さの違い」をイメージして滑った,2タイプの滑りの映像がありますのでご覧ください。小回りなので動きが速いのですが,じっくりご覧ください。前半の滑りは“やや長い穂首”を,後半のものは“短い穂首”の筆をイメージして滑った小回りです。脚の使われ方に微妙な違いがあるのが分かると思います。
 前半の“やや長い穂首”イメージの滑りは,脚の使われ方が幾分ゆっくりしています。ターン中盤から後半にかけて脚がたたまれる時も,また角付けを切り替えてから中盤にかけて脚が伸びる時も,その動きがゆっくり行われています。そのため,小回りとしては回転円弧が丸めのスムーズな運動が現われています。ターン前半もしっかり滑っているのが伺えます。コレに対し,後半の“短い穂首”イメージでは,筆先が短い...というイメージがあるため,どちらかというとチョコマカした,落ち着きの無い滑りになっています。ですが,別の視点から見れば,素早い切り替え...ということもできます。前半の滑りに比べれば,ターン円弧に丸さは無いものの,軽快な小回りになります。前半の滑りは円弧はしっかり描いているけれど,ノッタリした滑り...という見方もできます。
  小回り...というと,多くの方は,後半のようなイメージを持たれる方が多いのですが,それもできるし,前半のような滑りもできる...というのがベターだと思います。それを滑り分けるにはイメージとして,“穂首の長さ”を変えてみることです。筆先の長さだけでなく,穂首のしなりの強度も違う...というようなイメージ別けができれば,さらに違った滑りができるでしょう。
  皆さんも実際に雪上で試されると,思った以上にその“フィーリング”の違い,そしてその結果現われる運動の違い,を感じられることと思います。ぜひお試しください。
  今回は「穂首の形や長さの違いをイメージして滑る」...でした。




-----☆★【TOK】の Feelin' Ski ★☆----- 0057 “お習字ターン”#10 ∞ターン ----


  “お習字ターンイメージ”の十回目で,今回は“∞ターンを筆イメージで...”がテーマです。
  “キャスター・ターン”でも「∞ターン」について解説してありますが,今回はそれを“お習字ターン”でイメージしてやってみよう...ということです。先ず,右の図とそれから「筆イメージ∞ターン」をクリックして映像をご覧ください。
  ビデオの停止画面のところの図が上の図に相当します。「∞ターン」とは,山回りターンのように,フォールラインに対してスキーが直角になる以上に回り込み,そこから次のターンに入って行く滑り方です。身体を次のターン内側に移行することによって角付けの切り替えを行なったり,チェック的に瞬時に角付けを強め,その反動で角付けの切り替えを行なう滑り方では,この様な滑りはできません。ところが,キャスターイメージや,“お習字ターン”イメージでは,これができてしまうのです !!!。!(^^)! ビデオ映像を見てお分かりのように,確かにフォールラインを過ぎてスキートップが山側を向いた後,次のターンに入っています。この滑りのポイントは,一旦,山回り感覚で仕上げるつもりでターンして行くのですが,まだスキーが前に進む力が残っている内に“払うゥー”から“書くゥー”につなげる意識をもつことです。“払うゥー”の時に前に進むエネルギーが残っていないとコレはできません。
  私たちが自転車に乗っているとき次のような経験をしたことがあると思います。それは,「走っている自転車では,ハンドルから手を離しても乗っていられる...」という経験です。つまり,前に進む勢いがあればバランスは取り続けられ,安定して乗っていられます。そして,もしハンドルから手を離したまま,曲芸的に右か左に曲がろうとしたら,変局点(ターンの変わり目)で「みぎ」や「ひだり」に軸をゆっくり倒せばそれも可能です。
  “お習字ターン”イメージの∞ターンは,実はコレと同じことをイメージしているのです。スキーも同じで,スキーが前に進む勢いがある内は微妙なバランス維持が可能ですから,「前に進む勢いを止めないようにする !!!」という気持ちになれば,フォールラインに直角の局面を過ぎても,次のターンに入れるのです。この「前に進む勢い」を持続させるために重要な働きをするのが,“お習字ターン”の“書くゥー”であり“払うゥー”なのです。とにかく重要なことは,「筆を進め続ける !!!」という強いイメージなのです。図の“払うゥー”と“書くゥー”の「筆を止めないイメージ」をしっかり焼き付けてください。
  この様な「∞ターン」ができるようになり,そのコツをつかむと,この滑りがいろいろな斜面で応用が利くことが分かるでしょう。ギルランデはもちろん,斜面が凹だったり,凸だったりしても,面白いように雪面に“文字”ならぬ“シュプール”を描いて行けるのです !!!。多分...これまで“Do Ski”をやられてきた人には「異次元の世界の“スキー”?」と思われるかもしれません...。(*^^)v
 



-----☆★【TOK】の Feelin' Ski ★☆----- 0056 “お習字ターン”#09 積極性を産む ----

  “お習字ターンイメージ”の九回目で,今回は“書くラインをイメージする”ということについて...。
  これまで「筆の使い方イメージ」についていろいろ解説してきました。今回は,その「筆で書くイメージ」を持つことによって,“お習字ターン”でもっとも「特徴的に現われる運動」について見てみたいと思います。それはスキー滑走時の“積極性”です。
  “フィーリングスキー”のPart2“キャスター・ターン”では,「斜面移動を心がけることによってスキーが雪からの抵抗を受け,自分でスキーを回そうとしなくても自然にターンができるようになる...」というのが骨子でした。でも,キャスターに乗って行くだけ...というイメージがあるからでしょうか,なんとなく斜面移動をして行く感覚が強く,そこにはあまり“積極性”が見られない人が多いように思われます。キィーキャスターを支点にして積極的に斜面移動して行けば“センサーポイントSP”から雪の圧が感じられるようになります...と説明させていただいても,実際は「あまり圧が感じられません...」という生徒さんの反応が返ってくるのです。
  ところが,この“お習字ターン”では,「自分でこの方向にこういう字を書いていこう...」と意識すると,つまり“書くライン”を意識すると,筆をその方向に運ぼうとしますから,その動きに“積極性”が出てくるのです。私たちが習字で実際に字を書くときは,あらかじめ筆をどう運ぼうかな?とイメージします。たとえば「一」という字を書くとき,先ず筆を「一」の字の左のポイントに置きます。そして,右の終点を意識して右の方に筆を運んで行って止めます。左の端に下ろした筆を,右の端を意識してスゥーッと運ぶのです。このとき,明らかに「右端を目標点として意識し,そこに筆を持って行く !!!」という強い意志があります。実はコレと同じ意識が“お習字ターン”では生まれて来るのです。紙ならぬ雪の上に筆を置き,この筆で文字を書くつもりになるわけですから,「円弧というラインを想定し,そこの上を筆でなぞって行こう !!!」という気持ちが現われて来るのです。このことが結局スキーヤーの積極姿勢となってその滑りに現われて来ます。
 

   

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