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   今回は一連の精神集中シリーズから話を変えて、TOK先生がよく日記の中でも取り上げておられる「消費社会と欲望」に関連する事を書いてみます。
 
 
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  さて、今回はモンゴル・スンベル村で見た忘れられない光景をご紹介いたします。
 
 
  前回お話したスンベル村の周辺は、ホロンバイル高原と呼ばれており。その大草原の中央部約200kmをハルハ河という、日本で言う1級河川相当の河が流れています。そのハルハ河の河川敷が草原を幅2k〜15kmにわたって削り、ホロンバイル高原を分断しています。つまり、ハルハ河沿いに広大な河川敷が広がり、その中にスンベル村があり、丘の様な斜面を上がると更にホロンバイル高原の大草原が延々と水平線の彼方まで連なる・・・そんな場所です。
 
 
  それはある日の早朝の話でした。朝日がその丘の様な斜面を照らし出して緑色に輝きを放ち、とても綺麗でした。
 
  その時、私は草むらの陰にしゃがんで用をたしておりました。すると、何処からともなく馬に乗った若者が現れ、向こうの方にゆっくりと通り過ぎて行きました。彼は私に気がついたそぶりはありません。どうやら地元の牧童が愛馬に朝の調教をつけているようでした。のどかな光景でした・・。何処からともなく小鳥の鳴き声も聞こえてきます。
 
  しばらくすると、突然、駆け足の馬の蹄の音と共に、佐渡桶さの「ハァ〜ッ」の「ァ〜」の部分に似た感じの歌声が聞こえてきました。何かなっ?と思ってそちらの方を向くと、先程の牧童が歌声を響かせながら立ち乗りで全速力で馬を走らせている姿が目に飛び込んできました。
 
  それ見た瞬間、私は震えがくるような感動を覚え、全身に鳥肌が立ちました。今でもその光景を思い出すと鳥肌が立ちます。朝日で緑に輝く草原を、声高らかに歌いながら全速力で駆け抜けてゆく人馬。これほど気品に満ちた美しい光景を今まで見たことがあっただろうか・・・いや、美しい風景は今までも何回か見ているが、このような光景は見た事がありませんでした。
 
  まさしく、彼ら遊牧民は何千年も前からこのように暮らして来たのだな・・・と、モンゴル民族の歴史の重みやプライド・気高さも同時に感じさせてくれる光景で、モンゴル人の原点を見たという実感が沸いてきました。
 
 
  その頃、私に馬に対する思い入れがあったという面は否定できません。スンベルという所は国境警備隊のトラックのガソリンも枯渇していると聞いていたので、移動手段が馬でも大丈夫な様に事前に乗馬を習っていたからです。しかし、仮に乗馬を習っていなくても、その光景を見て全身に震えが来るような感動を味わう事はできたでしょう。それ程までに美しい光景でした。
 
 
  果たして、日本に外国の方が来られた時「まさしく日本に来た!」と歴史の重みまでも実感される瞬間があるのだろうか?西洋化された日本に国民性を感じさせる物が残っているのだろうか?
 
  そう考えさせられました。それが今の日本であり私でもあるのです。仕方がないとは言え残念な部分だと思います。
 
 
                                  
・・・続く
 
                                       
 
(2001/09/05)
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