“ 冒険 ”    (07/30/01 メルマガより)

“冒険……”     ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

  この週は“冒険”ということについて考えました。
  早大4年生で,この5月に最年少で七大陸最高峰制覇を達成した“石川直樹”さんが,ある新聞のインタビュー記事の中で, 『  …自分を冒険家とは思っていません。日常の中にだって冒険はある。例えば、会社を興すのだってそうだし、学生が試験でヤマを張るのも、当事者にしてみれば大きな冒険です…』と語っておられました。
  私も“冒険”は誰にでもある…と思っています。冒険の難易度に関係なく,その人なりの素晴らしい“冒険”が…。そのような冒険する心があるから“夢”が広がり,“挑戦”が生まれると思います。私たちが大事にしなければならないものだと思います。


 私はいつもスキーレッスンで,スキーに挑戦しうまくなろうとするのも立派な“冒険”だと思っています。そして,そのお手伝いができるのが嬉しいと思っています。
 初めは“滑る”という感覚に慣れていませんから,少し滑るだけでバランスを崩してしまいます。それがいつの間にか,滑ることが“快感”になっているのです。これは,「バランスが崩れる=不快」…という概念が,いつの間にか「滑る=快感」という図式に置き換えられたのです。このときに自分の意志として“冒険心”が無かったら“快感”を味わうこともできなかったでしょう。

 “冒険”とは挑戦する心の在り様だ…とも言えます。そういう意味では“スキー”は無限の“冒険的要素”が詰まっていると言っていいでしょう。直滑降ができるようになれば曲がる事が…,緩斜面でできるようになれば急斜面が…,低速でできるようになればハイスピードで滑ることが…,整地で滑れたらコブや深雪で……と際限がありません。これ全て“冒険”ですそれぞれクリアできたときの喜びや快感は素晴らしいものです。

 考えてみると,人間が体を動かして行なう行動は,そのほとんどが“地球の引力に逆らう”という性質を持った「走る」,「跳ぶ」,「泳ぐ」,「投げる」,「蹴る」,「打つ」…などで,“引力に従う”という「滑る」という運動は最近まで無かったように思います。人間の身体そのもので“滑る”ということができない構造になっているから,これは当然のことだったかもしれません。ですから,これまで「滑る」という動きからは「快感」ではなく「不快感」しか感じられなかったように思います。その結果,これまで進化し続けてきた人間の身体に“滑る”という感覚はあんまり育たなかった,と言っていいでしょう。
 しかし,「滑る道具=スキー」を用いることで,新しく「“滑る”という感覚」が快感として受け入れられるようになってきたのです。「滑り降りる」という新たな身体運動が,これから人間の本能の中に受け入れられ,育っていく…そんな気がします。地球の引力に耐えるのではなく,素直に引く力に順応し,その力に任せる…。人間のあらたな本能が開発され,そのDNAが子々孫々に受け継がれていく…。

 人間が“滑る”という冒険をとおして,新たな身体的能力を人間の本能の中に育てて行く…。宇宙空間に働いている“引力”を,快感としてとらえ,身体の神秘の世界に溶け込ませて行く…。
 そんな風に考えると,“スキー”って楽しいですね!(^I^)

 To Top