“フィーリングスキー” 
          
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                      Chapter 1  雪に親しむ

 Contents  ☆★☆

Contents  ☆★☆ 
0006 雪原散歩
0005 板から感じる…No.1
0004 感じて伝える
0003 触感
0002 
雪からのメッセージ
0001  “フィーリングスキー”

 


      -------------☆★フィーリングスキー★☆-----------No.0006----
 さて,今日のテーマは“スキー板から感じ取る”の二回目です。昨日は「身体の下で滑らせる」ということまで行ないましたが,今回は「雪原散歩」です。
 簡単に腰の下で雪の感触がつかめたら,次は雪の上を滑らせながら移動してみます。雪を状態を“スキー”を介して足裏でかんじ取ることと,”滑る”という感覚がどういうものかイメージする練習です。ほとんどの初心者は”滑る”という言葉から「バランスが崩れ倒れる…」ということをイメージしがちです。ですから,日常生活ではできるだけ滑らないように注意します。ですが,それは「マイナーな感覚」で,これから“スキー”を楽しもう…というためには大きな支障になります。スキーが滑ったらその上乗っかっている“身体”も一緒に移動しよう…とする気持ちが大事なのです。私たちの生活の中に“滑る”という習慣がないのですから,初めは誰でも“滑る”ことが怖いのは当たり前です。”身体全体が一緒に移動する”という感覚は,腰(重心)が足や下半身にどう付いて行ったらいいか?ということを学ぶことでもあります。下半身と上半身の対応の仕方を学び取ることです。
 ”雪原散歩”は平地を”滑る”ということだけでなく,”斜面”が”滑ること”とどういう関係にあるか?ということも教えてくれます。つま先の方が下がっていればスキーは前に…右側が下がっていれば右方向に滑り始めます。水が高い所から低い所へ流れるように,スキーも高い所から低い所へ滑るのです。当たり前のことですが,初心者は足裏感覚が未熟なため,どちらが高くてどちらが低いか?ということが分からないのです。”雪原散歩”は,少しづつですが「足裏感覚」と「滑る感覚」がどう対応しているのか?ということを身体に教えてくれます。このとき,目でも漠然と雪景色を見てはいますが,斜面感覚は“足裏”で感じるようにしなくてはいけません。雪原には緩急さまざまな斜面があり,また日陰や吹き溜まりなども点在しています。その時々の「足裏感覚」は微妙に違います。できるだけその違いが判るように意識を集中させることです。目では景色を楽しみ,足では雪の感触を楽しむ…これが大事です。
 雪原をスキーをつけて歩き回る,あるいは滑り回ることは,体の反応を磨く…ということと同時に,“滑る”=“楽しい”という心理的な図式を身体に記憶させる上でも,たいへん大事なことです。いきなり斜面に連れて行って「さあ,滑ろう!」とやったのでは“恐怖心”が先に来てしまい「楽しい!」どころか「怖い!」になってしまいます。
 私の所属する八方尾根スキースクールの恩師,「福岡孝行」先生は,少なくとも「雪原の散歩」を少なくとも一日はやるべきだ…と言っておられました。昔はその意味が良く理解できませんでしたが,今は全くそのとおりだと思っています。結果だけをせっかちに求め,途中の大切なモノを軽んじる…これでは後々「雪と戯れる楽しさ」など解るはずがありません。
 「形」だけを求めるのではなく,「心や身体に訴えかけるモノ」を感じ取る…このことが本当の“スキー”の楽しみ方だと思います。初心者だけでなく,中・上級者も時々は雪原を歩き回ることで,雪からのメッセージを感じ取ることが必要なのかもしれません…。(^I^)


      -------------☆★フィーリングスキー★☆-----------No.0005----
 さて,今日のテーマは“スキー板から感じ取る”の一回目です。
 「No.0004」で足裏(スキーブーツ)での情報収集についてお話しましたが,実際に“スキー”を楽しむ時は,さらにスキー板を装着することになります。雪の情報は「雪」→「スキー板」→「スキーブーツ」→「足裏」→「脚」→「上半身」→「脳」…という経路で伝わっていきます。ですから,直接「雪」にタッチしている「スキー板」が感じ取った情報が最初の大事なデータとなります。
 ブーツで雪の感触を味わうことが出来たら,次は「スキー板で感じ取る練習」が効果的です。
 それには先ずスキーをつけて「平地」を歩くことです。滑らせる必要はありません。スキーを普通に一歩づつ持ち上げながら,普段歩くように歩くのです。これでスキー板やスキーブーツの重さが脚で感じ取れます。前の方が後ろより少し重いなぁー…ということも分かります。
 歩くことに慣れたら,次はスキーを雪面から持ち上げず,接触させたまま腰の下でスキーを前後にずらしてみます。先ず,片足を固定して反対のスキーを少しだけ前後に滑らせると楽に出来ます。反対側も同じようにやってみます。大きくスライドさせる必要はありません。ほんの20〜30センチでOKです。ここで初めて「スキーを持ち上げずに雪の上を“滑る”」という感覚が体験できます。少ししたら今度は片足を前に,反対側を後ろに…という風に腰の下で互いに反対側に同時にスキーを前後させてみます。最初はゆっくり…,次第に早めて…またゆっくり…という風にするとリズム変化が出て興味をつなぐことも出来ます。ここで大事なことは「動作」ではなくスライドしている時の「足裏の感触」です。ムズムズするような感触が足裏で感じ取れたら最高です。指導者は常にいろいろな「足裏の感触」について生徒さんに訊ねたり,自分の感覚を表現することが大事です。
 初心者の方に“スキー”をお教えするとき,“エッジング”が思うように出来ないために,簡単な緩い斜面でも登れない…ということが多いのですが,それは「スキーと雪がどういう風にコンタクトしているか?」が解らないからです。それなのに「角を立てて…」,「ヒザを山側に倒して…」などという指導はどういうものだろう?と考えてしまいます。さらにひどいのは,エッジングがうまく出来なくて,登れない人のためにマットなどを敷いて,その上を登らせるやり方です。雪とスキーのコンタクトを足裏にイメージする絶好の練習機会なのに,それを奪っている…としか思えません。滑り降りること,先に進むこと…に目が行き,大事な本質を飛ばしているような気がします。
 じっくりと「スキー板で感じ取る練習」をすることで,「雪とのコンタクト感覚」を磨くことが出来ます。そうすれば,エッジングの角度と量の関係などは,おのずと足裏のフィーリングとして会得出来ます。
 スキーを履いて初めに感じる雪の感触…これがこの後のスキーの楽しみに大きく影響して行く…そんな気がします。大事にしたいものだと思います。(^I^)



      -------------☆★フィーリングスキー★☆-----------No.0004----
 さて,昨日まで「感じることの意味」…についてお話しましたが,今日はそれを初心者のスキー上達に役立てるための方法について考えてみたいと思います。“感じて伝える”が今日のテーマです。
 先ず雪の上に立ったらスキーブーツで雪の感触を確かめる練習をします。特に“スキー”を始めたばかりの方は,融通の利かない重いスキー靴のため,どことなく宙に浮いた感覚でおられる人が多いのです。どれくらいきつくバックルを絞めたらいいものかも分からず不安に思っています。このときに「雪の状態をイチバン感じ取れる強さにして下さい…」というアドバイスは効果的です。
 そして,雪の硬さ,柔らかさ,を確かめながら,雪の上をブーツだけで歩き回ってみます。「キュッキュッ…」と雪が音を立てるのを耳で確かめるのも楽しいものです。雪質によって微妙にその音質が異なります。雪にはいろんな表情があることが分かります。慣れてきたらちょっとした斜面を登ったり降りたりしてみましょう。つま先上がり,つま先下がり,右に傾いている,左に傾いている…など,斜面の感じがつかめます。ブーツのままで歩く,走る,そして少し前後左右に滑らせてみる…などの運動は“人間と雪との会話”の第一歩,と言えるでしょう。(^I^)
 このような“足裏で感じ取る練習”…,つまり,右の図のように,足裏にあるいろいろな“雪”の状況を,黄色の足裏センサーで感じ取り,それを青線のように体の中枢に伝える…という練習は,これを繰り返すことにより,「目で“雪”を判断」するのではなく,「足裏で“雪”を感知する」という,これまであんまり行なったことの無い,新しい“感じ方”の訓練になります。
  「目よりも足裏で感じる」…という,一連の“感じる訓練”はその後の“スキー”の練習に大いに役に立ちます。
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  さて,明日は日曜日…。メルマガ発行の準備がありますので,教師日記の“フィーリングスキー”講座はオヤスミさせていただきます。 では,また来週…乞うご期待!

      -------------☆★フィーリングスキー★☆-----------No.0003----
 さて,昨日は“雪からのメッセージ”ということでお話しましたが,今日はそれをすすめて“触感”について…。
 私たちは日常生活においてもいろいろなことを感じています。「視、聴、嗅、味、触」の五感,という言葉があるように,目でみたり,耳で聞いたり,鼻でかいだり,舌で味わったりします。では,最後の「触」という感覚はどの部位で行なわれるのでしょうか?普通は「手」で行なうことが多いでしょう。でも,実は「足」や「舌」,「唇」でも“触る”ことが出来るのです。それほど意識はしていないのですが,歩く時は,地面の状況は足裏で感じていますし,物を食べる時,例えばラーメンの麺の硬さは舌で感じています。そしてそこで感じ取った“触感”は脳に伝えられているのです。
 “スキー”をするとき,私たちは先ず目で雪を見,脳で判断して,スキーを操作しようとしがちです。でも良く考えてみると,硬いとか柔らかい,前下がりだうしろ下がりだ,とかの「雪や斜面の情報」は,雪と接触しているスキー板からスキーブーツに伝わり,そして足でその感じを捉えて脳に伝える方が,より確実に情報を伝えることが出来る…ということがわかります。目で見た情報よりも,足で感じる情報の方がより詳しく正確だ,と言えるのです。先ず雪の状況を知る,という意味でも“足で感じる”ということが大事なのです。“触感”の大切な所以です。
 “スキー”を始める初心者に,いきなり滑り降りることを教えたり,ターンすることを教えたりすることは,この“足で感じる”という大事な過程を飛ばしていることになります。時間の無駄のようですが,私の経験から,この“足で感じる”ということをじっくり体験した人とそうでない人は,技術的にも,スキーを楽しむ…という意味でも,後になって大きな差が出ると言えます。半日か一日くらいかけて,スキーを履かずに雪の上を歩いたり,雪合戦をしたりすること…また,スキーをつけて雪原を歩き回ること,が雪の感触を楽しむことになり,結果として「雪の情報を足でとらえ脳に伝える」ということの,基本的な訓練にもなるのです。
 大げさに言えば,“雪を感じる”ことで,「外界の刺激に触れて心に感じる」ということが出来るようになります。“感じよう”とすることで,心が動かされ,心の中の「知覚」が目覚める…と言っていいでしょう。「感じることの楽しみ」が解るようになる…とも言えます。実はこの「心で感じ取る」ということが,将来の“スキーの楽しみ”と大きく関わっているのです。
 「出来た出来ない」,「テクニックがある無い」,「あいつよりうまい下手」…というようなドクドクした感情ではなく,どのレベルでもそれぞれに楽しめて嬉しい!…という素直な感激が沸き起こる原点はここに在る,と思います。
 “触感”を磨き“感じる”能力を高めれば,より心が強く動かされ,感動する心が培われる…。
 “スキー”ってホントに奥深い…と勝手に決めている【TOK】でした。(^I^)


      -------------☆★フィーリングスキー★☆-----------No.0002----
 さて,今日は新テーマの“雪からのメッセージ”ということから…。
 “フィーリングスキー”で大事になるモノ…,それは“感じる”ということです。英語では“feel”で,その言葉の意味は…「感覚器官を通じて、外からの刺激を知る」
,「外からの刺激を知覚し、生理的な反応をするだけでなく、それにより心を動かされ、なんらかの感情を抱く」…ということです。
 私たちが「雪」の上に立った時,誰もが感じること…それは雪の「白い色」であり,ヒヤッとした「冷たさ」です。次に,握ると「固まる…」ということも解かります。歩き回ると「ギュッギュッ…」という音も聞こえます。口の中に含むと「冷たく解けて水になる」ことも…。このような感覚は私たちの五感を通して身体全体で感知されます。そして,「雪のある自然」が,「どことなく普通の世界と違うぞ…!」という感動に似たフィーリングを受けます。
 私たちが初心者に“スキー”をお教えするとき,先ず考えなくてはならないことは,このような「雪の自然の特異さ」です。滑ったり回ったり…ということより先に,「“雪”という自然からの贈り物」をしっかり身体で感じ取ることが大事なのです。“スキー”をつける前に「雪の中で転び回る」ことが大事です。

 
“スキー”を始めるとき,私たちはこの様なことを実感しているのですが,何年か“スキー”をして来るとその感動や「雪の息づかい」ともいえる雪からのメッセージを忘れがちになります。あなたは感じてます?
 …ということで,肌で感じる雪からのメッセージ…これを大切にしたいと思った【TOK】でした!(^I^)


      -------------☆★フィーリングスキー★☆-----------No.0001----
 
 これまでの私のスキーレッスンを通じて感じたことを基礎にし,スキーの楽しさ,自然との対話の奥深さ,身体の素晴らしさ,…を中心に据えた「スキー上達の方法」をお話してみたいと思います。これから新しく“スキー”をしてみよう,という人はもちろん,これまで“スキー”を楽しんでこられた人達にも何かしらお役に立てるような,そんなことを目指しています。(^I^)
 年齢が解ってしまいますが,“スキー”を始めて40年,“スキー教師”をさせてもらって30年になりました。(^I^)おかげさまでその間,“スキー”についていろいろな経験ができました。そして,いま思うことは「時代と共に“スキー”の楽しみ方が変わったなぁー」ということです。
 一番の要因は「道具の変化」だと思います。特に“スキー板”の変化は,「ターンするためのスキー技術」に対する考え方を大きく変えました。「スキーを動かす」ための技術から,「ターンコントロールする」ための技術…に変わってきました。また,いろんな特性を持ったスキーの出現で,それぞれに特有で,また有効な技術も生まれました。
 二番目は「スキー場環境の変化」です。機械力が使えるようになり,ゲレンデ整備は比べものにならないくらい簡単に,しかも完全にできるようになりました。人口降雪機が使われ,これまで雪がつかなかった場所にも雪を貼り付ける事ができるようになりました。人口のコブや凹凸さえも造れるようになりました。滑り手は自分の好みでゲレンデを選ぶことができるようになったのです。このことは,自分の好きなシチュエーションだけを選べる…ということにつながり,嫌いなところはパス…というような現象も生みました。
 三番目は,上記1,2の環境の変化によって「スキーヤーの選択肢が広がり,志向が先鋭化した」ということです。このことは,いろいろな楽しみ方ができるようになった…ということですが,逆にとらえれば,いろんなタイプのスキーヤーが出現したということにもなります。“スキー”にたいする価値観がひとつではなく多様化した…ということでもあるのです。
 このように多様化した“スキー”というスポーツを学んだり,あるいは教えたりすることは大変難しくなりました。それぞれのシチュエーションにあったベストな方法があるからです。しかし,その多様性に合わせて,ひとつづつその方策を考えていたのでは大変な作業になってしまいます。もちろん,指導の現場ではその要求に応えるべく対応をしてはいますが,従来型の方法では「アレにはイイが,コレにはどうも…」,「コレには適しているが,アレにはあてはまらない…」…といったことが起きてしまいます。
 ここ数年,このことを考えて来て,ふと思いました。「雪の斜面を上から下に滑ってくるスポーツなんだから,単純にそれをベースに“スキー上達”の方法を考えてみたらどうだろう?」。「雪」があって「人間」が居て,そして「スキー」がある。この三つの組み合わせをどうするか?ということなんだから,そのあいだに働く力を「人間がどう感じているか?」ということがキーワードではないか…?
 「スキーをとおして,ヒトは雪をどう感じているか?」…。実はこのことをテーマに,20年近く前,スキーグラフィッ○に連載したことがあります。“フィーリングスキー”というタイトルでした。
 道具が変わっても,ゲレンデが変わっても,変わらないモノがある。それは「スキーヤーの滑走感覚」です。足で感じ,身体で感じ,心で感じる“スキー”です。このことをこれからお話していきたいと思います。毎日の書き下ろし,となりますので言葉の使い方が適正でなかったり,表現がまずかったりすることが多いと思いますが,その時々で訂正しながら進めていきたいと思います。
 “フィーリングスキー”…ぜひお楽しみに…! (^I^)

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