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            Chapter 11    キャスターターン 自由自在編

 Contents  ☆★☆

0047  どこに行きたい?

0046 
∞ターンに挑戦

0045 急斜面を楽しむ

0044 
場当たり的スキー



---☆★【TOK】の Feelin' Ski ★☆--- 004
7 キャスター・ターン 自由自在編 No.4 「どこに行きたい?」---

 これまで,15回にわたり「キャスター・ターン」について解説してきました。前にもお話したように,このキャスター意識でのスキーは,私のこれまでの教師生活の「総括」的な意味を持つスキーイングイメージです。スキーの一般的な技術用語を使って,身体をああしろ,こうしろ…という指導ではなく,イメージをいろいろ沸かせることによって,求める運動が自然にできるようにする指導を心がけてきた結果生まれたものです。ですから全く感覚的な滑り方であり,この感覚がうまく他人に伝わればその方も同じような体験をすることができると信じています。
 ところで,キャスター・ターンの特徴のひとつに,「キーキャスターを支点として,斜面を自分が行きたい方向に行こうとすると,センサーキャスターが雪の抵抗を受けて,その希望の方向に向きを向けてくれる…」ということがありますが,このことをスキーブーツだけで試してみると面白いことがわかります。雪とのコンタクトを無くさないで,斜面をターンしながら降りようとすると,その時の支えは「かかと」でないとうまくいかないのです。つま先側にすると身体がつんのめってしまいますし,土踏まず付近を中心としてひねりながら降りようとすると,斜面移動がうまくいきません。結局支点をかかとに,つま先を行きたい方向に向けるようにすると,うまい具合にターンしながら降りることができます。スキーというのは,足の長さがそのまま縦方向に長くなったものだ…と考えれば,いくら2m近いスキー板を履いたとしても,その基本的な支点は「かかと」にある,と言っていいと私は考えています。
 さて,ここのところ「トップコントロール」とか「テールコントロール」という言葉が良く出てきます。このことをキャスター・ターンとの関連で見てみたいと思います。ものの本によれば「移動しながらテールを押し出す」のを“テールコントロール”と呼び,「移動しながらトップから角付けていく」のを“トップコントロール”と呼んでいます。キャスター・ターンでは,「押し出す」という感覚は無いので,テールコントロールの説明の言葉の中の「押し出す」というのが気になりますが,これを無視して考えることにします。で,結論から言えば,「トップコントロールはキーキャスターの転がりを,限りなく12時方向に意識したときの滑り」で「テールコントロールはキーキャスターの転がりを12時方向以外の方向に設定した滑り」…ということだと思います。例えば右ターンの「スキッド&カーブ」の仕方を,「テールコントロールからトップコントロールへ」という風に考えて演技をするとします。キャスターイメージを使わないと,先ずターンの始動期にテールを横に押し出し,少しづつトップの角付けに移行する…ということになります。しかし,この滑りでは,かかとを押し出してしまうので,つま先を中心として,スキーのテールが横移動をしています。こういう状態になってから,次にトップの角を立てて行くのは至難の業です。どうしてか?というと,テールの横押し出しをすることによって,かかとはターン外側に移動し,“重心”とのバランスを取れない状態になり,かつ腰がターン外側に逃げる体勢になりがちだからです。こういうつま先荷重(支点)状態になってから,さらにトップの角を立てるのは容易ではありません。そこで,これをキャスターをイメージして行なってみることにします。角付けの切り替えを行なってから,先ず1時や2時方向にキーキャスターを転がすように乗り込んで行き,その後徐々に12時方向にキーキャスターの方向を変えて行く…ということになります。キーキャスターが横移動から前移動にその転がり方向を変えるだけですから,テールだけがターン外側に出てしまうことはありません。ですから後半のトップコントロール状態に移行するのは容易なのです。2003−2004シーズンは,いろいろな場面でこの「テールコントロール」や「トップコントロール」が使われることになりそうですが,キャスターイメージさえしっかり持っていれば,戸惑うことは無い…と私は思っています。(^I^)
                    -------------☆★☆-----------
 さて,これまで解説させていただいたことを読み返してみて思うことは,結局「スキーを履いてどこに行きたいのか?」
ということに尽きるように思います。キャスター・ターンでは,キーキャスターにしっかり乗り込み,その行きたい方向に行かせてあげる…ということになります。このことを実現させるのに,ある人は「ひねる」という動作を使っているし,またある人はターン内側にスキーをスライドさせる感覚を重要視している…ということなのだと思います。ここでお話ししてきた「キャスターイメージ」はそのひとつの方法なのです。ですから,あくまでも感覚なので,これが絶対正しい!とか間違っている!とかいうことではありません。ただ,多くの生徒さんにこのイメージで滑ってもらったら,その方々の“スキー”の動きが明らかに変わった!という感想を私は持っています。そして私のレッスンを受けられた方々も「これまでに味わったことの無い感覚…。スキーってこんなに簡単だけれど奥が深いの?」という言葉を発しておられます。
 この「キャスター・ターン」…試していただいて,少しでも皆さんのスキーライフにお役に立てれば,これ以上の幸せはありません。
 「キャスター・ターン」の 【 Feelin' Ski 】…一応これにて終わりといたします。
 お読みいただき,ありがとうございました。(^I^)



---☆★【TOK】の Feelin' Ski ★☆--- 0046 キャスター・ターン 自由自在編 No.2 「∞ターンに挑戦」---

 前回は「急斜面を楽しむ」…ということをお話しました。今回は私が最もキャスター・ターンで効果がある!と思う種目に挑戦してみようと思います。(^I^)c_girurande.jpg (36364 バイト)
 先ず,手始めに「ギルランデ」です。(図45−1)のように,斜面を斜め横方向に,右,左,右,左…という風に,丸々一回転しないで進んで行くターンです。【注:図はサムネイルされていますのでクリックして大きくしてご覧ください】 このギルランデ,「角付けの切り替え」や「クロスオーバー」意識を意識して行なうとけっこう難しいのですが,図のようにキャスターを意識して行なうと大変スムーズに行うことができます。図のように,先ず左ターンの後半で右足二輪から四輪での捉えに意識を変え,普通のキャスター意識での角付けの切り替えと同じように,左二輪での捉えに移行します。そして,左スキーがフォールライン方向を向いたら,すかさず右足の内側キャスターの転がりに乗り込んで行くようにします。図のピンクの円部分の局面です。普通,ギルランデでは,ここからスキーを左方向にターンさせるために,角付けを左に傾けたり身体を左方向に移動させるようにするのですが,これがなかなか大変なのです。どうしてか?というと,左スキーがフォールラインを向いている状態(図のピンクの円部分)では,バランス軸が最も右側に寝ていて,角付けが一番強い局面なので,このままでは左ターンができないからです。フォールラインとの交錯以前に“重心”がスキーの左側に行かないとギルランデの左ターンが始まらないのです。ところが,キャスター意識を持って「左一番キャスターゴロゴロ…」と右ターンをしてきて,次に左に行こうとしたときに,「右1番キャスターゴロゴロ…」という意識を持つと,雪面コンタクトを失うことなく,滑らかに右1番キャスターが“重心”の外側に出て行ってくれます。これは本当に不思議な気がするほど,ほとんどの人がうまくいってしまうので,私もレッスンでこれを生徒さんにやってもらうときは非常に楽しみです。みなさん,決まってキョトン?…とした顔をされるのです。(^I^) 「角に頼り過ぎず,面で滑ること」が生きたひとつの例です。“重心”とスキーのクロスが鋭角的でなく,滑らかに行われるからこそできるギルランデ…ということもできます。(^I^)c_mugendai.jpg (49381 バイト)
 さて次はいよいよ(図45−2)のような「∞ターン」です。このターンは,意識として「b」の所までターンを引っ張る…というものです。普通でしたら,多分「a」付近で次のターンに入るのですが,この練習ではあえて,フォールラインに直角を通り越して「b」までターンを引っ張り,そこから次のターンに移行しよう,というものです。これを連続で行なうと図のように斜面上部に向かって滑る局面を含んだ「∞」に似たターンが出来上がることになります。この話をするとほとんどの方が,「それは無理だよ…先生。そこまで行ってしまったら,クロスオーバーができない…」と仰います。たしかに「b」の所まで来ると,フォールラインに直角以上に回り込んでいますので,身体を次のターン内側に移行することによって角付けの切り替えを行なったり,ひざだけで角付けの切り替えを行なうことはもの凄く難しくなります。チェック的に瞬時に角付けを強め,その反動で角付けの切り替えを行なう人は,クロスオーバーは不可能で,ターンになりません。
 ところが,キャスターイメージを図のように持って滑ると,これが可能になるのです。もちろん,どこまでも斜面上部に行けるわけではありませんが,スキーが前に進む勢いがある内は可能です。なぜかというと,「キーキャスター」が転がってさえいれば,その転がりのエネルギーを「b」から「c」に伝えることができるからです。キーキャスターの転がりがあるということは,雪の抵抗が向こうからやって来続けている…ということですから,センサーキャスターが雪の抵抗を受けることができるので,ターンが可能なのです。雪面の抵抗を受け止めてターンする意識があるからこそできるターンだ…とも言えます。もし,自分から,圧を雪に加える方法を使っていたのでは決してできないターンだ…ということもできます。
  「キャスター意識」の特徴は“斜面移動によって雪からターンエネルギーをもらう”ということにあるのです。そのためには,エッジコントロールならぬ「面コントロ-ル」的な意識が重要になるのです。



---☆★【TOK】の Feelin' Ski ★☆--- 0045 キャスター・ターン 自由自在編 No.2 「急斜面を楽しむ---

 前々回「0042」までで,キャスター・ターンのあらましを解説いたしました。前回からは実際にキャスターイメージでどのような滑りができるか?どんな風に実際の斜面を楽しめるか?ということをお話しています。名づけて「キャスター・ターン自由自在編」です。(^I^)
 さて前回,キャスター・ターンは「場当たり的だ」ということと,一般的には「面で滑る意識」が多い,ということをお話しました。キャスターの転がりに乗って行こうとする気持ちが強く働くので,斜面移動意識が強くなります。つまり移動によって雪面からの抵抗をしっかりもらおうという意識が働き,エッジで雪面を切る…という意識が少ないのです。実はこの「エッジで雪面を切る」という意識が少ないことが,大変素晴らしい結果をもたらすことになるのですが,今回はこのことをお話ししたいと思います。(^I^) 
 多くの人は「急斜面」…と聞くだけで,ちょっと尻込みをされることでしょう。その原因はイロイロありますが,一番の懸念,心配は「スピードコントロールがしっかり出来るだろうか?」ということだと思います。「急斜面」と聞くと,ターン前半から角付けをしっかりして雪面コンタクトを失わないように…という気持ちになります。つまり,「角付けに頼った雪面コンタクト調整」がうまく行くだろうか?という不安です。 
 でも実は,角を立てれば立てるほどバランス軸が寝て重心位置がスキーから左右に遠く離れてしまうのです。右上の(図44−1)と右下の(図44−2)を見てください。上の図は角を立てないで面で雪面を捉えている様子を,また下の図はエッジをオーバーエッジ気味に立てた様子を示しています。“重心”方向から支点方向に向かう力の大きさ,バランス軸の長さが「A」で同じだとします。この「A」という力は「B」と「C」,あるいは「B’」と「C’」に分けて考えることができますが,この両者を比べてみると,「C<C’」という関係になることがわかります。「A」は同じなのに,角付けをオーバー気味にした下の方は横へスキーを押しやる力の成分が大きいということです。つまり,角付けをすればするほど,下方あるいは側方へへスキーをずらそうとする力が働く…ということです。
 急斜面でこれをやってしまうと,角を立ててずれるのを防いでいるつもりが,逆にずれの多い滑りを誘発してしまう…ということが分かると思います。特に山回りの局面では斜面下方に落とされますが,面で乗ろうとすれば,軸が寝過ぎず「C」の成分を小さく設定できるので,下方に落とされる量が少なくて済むのです。また,角を立てる動作は雪の面を押す動作になりがちなので,ターンに必要な圧が重心から「外向きの力」になりやすく,スキーをターン外側に押しやる結果になってしまいます。ところが,キーキャスターで面で滑ろうとすると,落下することでスキーのトップ部分で雪の圧を受け止めようとしますから,ターンに必要な圧を,身体の重心方向に向かってやって来る「内向きの力」で起こすことができます。つまり,外へスキーを押しやる力が少なくて済み,角を立てて頑張らなくてもいいわけですから,急斜面で安定して居られるのです。キャスターに乗り込んでいくつもりで,急斜面に安心して突っ込んで行けるのです。突っ込んで行けば行くほど雪からのプレゼント,「ターンに必要な力」がやって来ます。急斜面ほど角を立てるのではなく面で滑ろうとする意識が必要な理由はここにあります。
 誤解の無いようにコメントさせていただきますが,角付けが全く要らない…というのではありません,必要最小限度の角付けは必要です。「1」のキャスターに乗る…ということは内エッジに乗るということで,この意識が最小必要限度のエッジングをする…ということになります。
 この意識での急斜面…ぜひお試し下さい。思いのほか効果があると実感できると思います。(^I^)



---☆★【TOK】の Feelin' Ski ★☆--- 0044 
キャスター・ターン 自由自在編 No.1 「場当たり的スキー---

 前回「0043」までで,キャスター・ターンのあらましは解説いたしました。今回からは実際にキャスターイメージでどのような滑りができるか?ということを見て行きたいと思います。名づけて「キャスター・ターン自由自在編」です。(^I^)
 さて,キャスター・ターンの特徴は兎にも角にもキーキャスターでの移動を心がける…ということでした。そうすることによって「身体の特徴・用具の特性・自然条件」に応じたターンが,その結果として自然に生じて来る…というものです。
「斜面移動意識」が先で,その斜面移動する時のスピードや迎え角が,結果としてターンの方向を決めてくれる…ということなのです。つまり,実際滑り始めて,その局面々々でスピードや迎え角,雪質,斜度に応じた方向が決まり,その状況をフィードバックして次の方向を決められて行く…という図式なのです。May/21/2003の教師日記でも書きましたが,キャスターを転がして行く方向がそのままターン方向ではないのです。例えば「1番」のキーキャスターを時計の1時の方向に転がして行くとします。すると雪からの抵抗を「2番キャスター」が受け止めタワミが生じます。このタワミは,スキー板の持っている性能や雪質,斜度,スピードの如何によっていろいろ異なります。ある時はタワミが大きくなるでしょうし,またある時は小さくもなります。つまり,キャスターを転がして行く方向が同じだからといってたわむ量は同じではないのです。その時々の斜面状況によって違って来ます。そして,たわむ量が大きければ大きいほど,スキーのトップ方向は内側に入り,ターン円弧は小さくなりますし,逆にたわみ量が少なければ大きい回転弧になります。スキーヤーはこの情報を時々刻々「センサーキャスター」で感じ取り,もし自分の進みたい方向と違っていたら,その都度「キーキャスター」の転がり方向を修正して行かなければならないのです。例えば,自分が想像したより小さい円弧になったら,「キーキャスター」の転がり方向を「1時方向」から「12時30分方向」に変えていくことや,「センサーキャスター」の位置をスキーのトップに近いほうに移す意識が必要になります。「そんな“感じて修正…感じて修正…”等ということが,すんなりできるはずが無い!」とおっしゃる方が居られるかもしれませんが,そんなことはありません。人間の持っている修正能力,適応能力は素晴らしいものがあります。時々刻々の状況を修正し自分の進みたい方向に行ける様,身体全体が協力してくれるのです。足裏で感じて滑る…といことは,実はこういうことなのです。(^I^)
 キャスター・ターンでは,「迎え角の修正」だけでなく,
センサーキャスターの位置の修正」も含めて,「移動」⇒「修正」⇒「移動」⇒「修正」…の繰り返しが大事です。先ずは,「キーキャスターである方向に移動してみる」。その結果生じたターン方向がそれで良ければそのままの方向に移動し続ければよいし,もし変えたければ内側に,あるいは外側に向きを少し変えて移動してみる…ということなります。まことに「場当たり的」なキャスター・ターンなのです。(^I^)
 小回り系の滑りで,円弧を小さいものにしよう…という意識が働くときは,キーキャスターやセンサーキャスターの位置をやや内側に移動する感覚がありますが,中回りから大回りにかけては,それほど内というわけではなく,面でとらえる感覚です。ですから,思ったよりもスキーの角付けを利用する感覚は少ないのです。それはどうしてか?というと,センサーキャスターからの情報を身体の“重心”で受け止めようとする意識が働くからです。“スキー”はバランスのスポーツだと言われていますが,そのバランスを考えると,先に解説した「バランス軸」や「センサー軸」,そして「サポート軸」は“重心”との関連でとらえるのが最適です。つまり,“重心”に対してどのような力が働いていて,どうすればその“重心”に最も悪影響を与えないで済むか?ということなのです。このことを身体の運動やフォームで解説するのは非常に困難です。なぜかと言うと,運動を起こすことは雪に対する圧変化を自ら起こすことになり,自らバランスを崩す運動をしてしまうことになるからです。フォームも,ある特定のフォームで滑れるものではなく,その時々の斜面条件によってその形は違うべきものです。ところが,これまで述べてきた「キャスターイメージ」を大事にすると,身体の運動は雪からの抵抗によって自然に起こってきますし,そのフォームもその時々の自然条件に用具の特性がどう反応し,それを各スキーヤーの身体の特徴がどう対処するか?で自然に決まって来るのです。
 このように,キャスターイメージのターンは,言葉は悪いのですが,まことに「場当たり的なスキー」だということができます。






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